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会合


 俺が『辺境サンゴ』の皆を送り出してから、二ヶ月近い時間が経過した。

 ガンドレアに留まっている間も、エンヴィーたちからの報告はひっきりなしにやってきている。


 当然ながら俺もその間、何もしていなかったわけではない。

 まず一番最初に取り組むことにしたのは、『通信』の魔道具の現状の改善である。


 現在『通信』の魔道具には二種類ある。

 ラインを使う有線型と、事前にラインを配置せずにマジックインパルスだけを使ってやりとりをする無線型だ。


 当然ながら有線型の方が使える距離は長い。

 事前に魔道具同士のラインをつないでいれば、かなり長い距離であっても通信が可能となる。

 リンブルでいえばガードナーと王都でも双方向通信ができるくらい。

 ガルシア内で言えば、隣接している領邦とやりとりができるくらいの距離でもいける。


 だから最初は有線がつなげればそれが一番いいよなと思っていたんだが……こっちの考えはすぐに頓挫することになった。


 そもそもの話、ラインというのはそこまで丈夫なものではない。

 断線するだけで連絡が取れなくなってしまうような不安定なものだし、長大に伸びるラインの全てを守ることは難しい。


 魔物被害が多かったにもかかわらず、それを自国の兵で殲滅したといいう特殊な状況下だからこそ、リンブルの国内で領地をまたぐような形で使うことができるようになっているのだ。

 『通信』の魔道具には同時にいくつかの防犯機能も搭載されているため、掘り返されたところで盗賊程度なら追い返すことができる。


 けれど正直デザント兵が未だうろついており治安があまりよろしくない今のガルシアでは、使うのは難しいと言わざるを得ない。

 土台長距離通信というのは、かなり治安の良い地域でなければ使うことができないものなのだ。


 この問題を解決するのは一朝一夕にできることではない。

 なんでもシュウのやつはそれなら人に触れなければいいじゃないかという逆転の発想で、海の底にラインを敷くつもりらしいが……今はまだ、夢物語だ。

 そんなことをしようとすれば、とんでもない額の予算が動くことになるだろうからな。

 俺の持っている素材を全て売り切っても足りるかどうか……。


 話を戻そう。

 それ故にガルシアで俺がクランメンバーと連絡を取るようにしていたのは、後者である無線型の魔道具だった。

 無線型の『通信』の魔道具――前者の長距離通信、かつ映像と音声両方のやりとりが可能なの大きな魔道具を『通信箱』と言うのに対し、こちらは音声しか届けることができず、また正式名称も決まっていない――にはまだ可能性があるというのは、俺の目線から見るとすぐにわかった。


 なのでこちらを改良していく方向で、色々と考えていくことにしたのだ。

 通信に関する技術に関しては俺の専門の範囲外なのでそこまで詳しいことはわからないが、マジックインパルスに関する造詣は深い。

 マジックインパルスの均一放射なんかは恐らくデザントでも一、二を争うほどに上手かったはずだからな。


 ガルシアでは各地にクランメンバーが散るだろうことは最初からわかっていた。

 そんな中で連携がセリアの使い魔頼りになってしまうのはいささか問題だからと、俺は技術班の中で可能な限りのメンバーを呼び出していた。

 『通信』の魔道具を改良しているシュウがギリギリ許せるという限界の範囲内で十人ほど、『通信』の魔道具作りの技術を持っている人間を連れて来たのだ。


 技術畑で専門用語の多い彼らを扱うことに最初は難儀したが……実は半月もしないうちに、『通信』の魔道具を改良する方策がどんどんと出てきて、トライアンドエラーをしていく段階にまで話が進んでいた。


 彼らと俺は、分野の違う専門家のようなものだ。

 そして同時に、お互いが詳しい領域に最低限の知識を持つ理解者でもある。


 なのでお互いにわかるように相手の分野でたとえていけば、そこまで相互理解が得られるようになるまでに時間がかからなかったのだ。


 まず無線型の長距離通信を行うために必要なものは何かということになった。

 一番最初に考えたのは、魔道具の大型化だ。

 魔道具を大きくし、そこから発することができるマジックインパルスを大きくすれば、それだけ遠方にまで声を届かせることができる。


 けれどこれには限度があり、小型だと半径十キロ前後だったものが、せいぜい三十キロくらいにまで増える程度のものでしかなかった。


 そこで俺が次に思いついたのが、大型のマジックインパルスを発する魔道具(これを親機と呼ぶ)を作り、そこから音を各魔道具(これを子機と呼ぶ)に伝えていくという手法だ。


 双方向ではなく片方向でいいのなら、マジックインパルスの送受信に関する部分の魔術回路、親機・子機両方で削ることができる。

 これによって無線で連絡を送ることのできる距離が、おおよそ半径百キロほどにまで増加した。


 ここまでやれば、後は人海戦術でなんとかすることができる。

 親機を百キロごとに設置して、その子機が音を聞き取れる範囲内で新たな親機を置く。

 そうやって親機と子機によってマジックインパルスを送受信できる範囲に網の目状に広げていくことで、いくつかの地点を中継しながらにはなるが、しっかりと連絡を取り合うことができるようになったのだ。


 これによって各地点にいるクランメンバーに親機と子機を持たせることで、連絡を取り合うことが可能になった。

 開発にかかった期間はおよそ一ヶ月ほど。


 おかげで俺も、戦局を把握することができる状態になった。

 俺が戦局を俯瞰して直接指示を出せるようになったことで、各地への迅速な対応が可能となり、救出作業と戦闘をより効率的に進めることができるようになった。


 残りの一月は、ただひたすらに戦闘の指揮を執っていた。

 ちなみに俺も救援が必要な場所に行きまくっていたのでバリバリ戦っていたわけだが、魔道具による通信網が構築されているため指示を出すのに支障は出なかった。


 一つ問題を挙げるとするなら、細かい裁可も基本全部俺が出すから、作業量がとんでもなくなったことだろうか。


 しっかし、バルクスを思わせる不眠不休の生活は懐かしくもあったが……久しぶりということもあり普通につらかった。

 今後は連絡が取れても、各自の自由裁量で進めてもらうというようなことが増えてくるかもしれない。

 俺も鈍ったものである。


 もちろん戦後処理や交渉にも、積極的に参加させてもらった。

 俺たちが積極的に戦った甲斐もあり、二月経った今ではとりあえず二週間の停戦が約束されている。


 停戦の理由は当然、戦いを終わらせるため。

 デザントがようやっと重い腰をあげて、戦いを終わらせるために動いてくれることになったのだ。

 そして俺は終戦に関する条約の締結の見届け人として、ガルシアのお偉方とデザントからやってきた特使との会合に参加することになったのだった――。


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