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共同作戦

「エルルリーダー、こちらダークエルフたち確保完了しました!」

「了解、それなら搬出急いで! ここからだと……ガナスのところに来るように伝えて!」


 エンヴィーがガンドレア、マリアベルがアンドルーで奮戦している中、もう一人あるノードから直接指揮権を託されたエルルもまた、一人奮闘を続けていた。


 彼女の担当は砂漠の国システナ。

 ガルシアの中で最北の地であるために最もデザントに近く、それ故に最もデザント兵達との遭遇の危険が大きな国である。


 エルルがこの場所に派遣されてきたのは、ここが最も激戦地だから……というわけではない。

 そもそもの話幹部メンバーの中では彼女の実力は一番低い。

 純粋な戦闘能力で言えば酒を飲んでいないライライ以上、マリアベル以下しかない。


 けれど最も重要かつ難しい任務地を言い渡されたのは、エルルであった。

 もし彼女が判断を誤ってデザントに連れて行かれてしまえば、奴隷達の救出は難しい。


 言質において最適な判断を、リンブル・デザント・ガルシアの三国の視点から考えることのできる人材。

 そんな人物は誰よりもアルノードのことを近くで見続けた、エルルをおいていなかった。


 エルルは現在、エンヴィーとマリアベルが率いている三百弱とアルノード・サクラ・セリアの三人を除いた全隊員を指揮する立場にある。


「本隊を安心して任せることができるのは、エルルだけだ。だから……頼んだぞ」


 そんな言葉を聞いて、アルノード大好きなエルルが奮起しないはずがない。

 彼女は自身の能力をフルに使い、なんなら限界のその先へ向かい急激に成長を続けながら、デザント軍に対する対応を続けていた。


 現在エルルは、以前アルノードが魔の森でやっていたのと似たような警戒網を取っている。


 彼女はシステナの砂漠を横断するように大量の魔道具を設置し、それを合わせて四つ用意していた。

 可能な部分を魔道具によって代替し、クランメンバーたちには直接戦闘に集中してもらうことにしたのだ。


 反応があった位置に向かってからは『隠蔽』の施された魔道具を使い接近し、ゲリラ戦で敵を撃破。

 そして近くに居るダークエルフ達へ引き渡していく。


 エルルは作戦遂行と並行して、中でも移動速度に長けたメンバー達に頼み急ぎ散らばっているダークエルフの里へ赴き、多少強引ではあったが彼らの戦力を利用することに成功していた。


 エルルは彼らにアルノードが貸し与えてくれた魔道具や魔法の武具を大盤振る舞いで差し出し、とにかく一致団結してデザント兵達を止めることが先決だと訴えたのだ。


 多少強引ではあったが、現在エルルはシステナのうちのいくつかの里のダークエルフの総指揮を、ダークエルフのとある女性と合同で行うことができるまでになっていた。


 そこから先、エルルは徹底的な合理化を行っていく。 

 魔道具に敵影が引っかかった場合には、現地に潜行させているメンバーに『サーチ&デストロイ君』や気力探知を使わせて敵の実力を確認。


 雑兵で問題がないところはダークエルフ達の物量で押し切り、自分たちが出る必要がある場合は現場に駆けつけ、現状手出しができぬレベルであれば遊撃隊としていつでも動ける状態にあるライライたちを動かす。


(任せてください隊長! ですから隊長の寵愛を……ぜひこのエルルに、一心に!)


 目をキラキラと輝かせながら愛用のモーニングスターを手慰みにじゃらじゃらさせているエルルに、来客がやっていた。

 その相手を見て、彼女の表情は露骨なほどに曇る。


「ただいま戻りました! 捕らわれていた中には獣人だけではなくドワーフやエルフまでいたため、彼らが生活できるよう手配をお願いします」


 表れたのは横に長い耳をピンと立たせている少女――ダナだ。

 アルノードたちと別れてからも独自に動き続けていた彼女はその実力をめきめきと上げつつあり、既にダークエルフたちの間では英雄視までされ始めているという。


 身体強化の魔法の使い手であり尚武の気風の強いダークエルフにおいては、何よりも強さが大切だ。

 彼女の立場は日に日に大きくなっている……が、それはむしろ好都合なことだ。

 エルルにとって都合が悪いのは、任務とはまったく別のところだった。


(この女狐……ポッと出のくせに、隊長になれなれしい態度を取って……)


 現場では難しい判断を仰ぐ場合は直接アルノードに聞くことの多い二人だったが、彼と話してる時のダナの態度は非常になれなれしく、そしてエルルと同じく、恋する乙女のそれだった。


 だが不快には思うが、新たな恋のライバルが出現してもエルルの心に大きな動揺はない。


『伝令、伝令! 北へ目掛け大量のデザント兵たちが行軍中! 規模は大隊、中に幹部級の強さの者もおります!』


 伝令が入った。

 故にエルルは意識を切り替える。


 強い味方がいて困ることはないのだ。

 そして今は何よりも人手が必要なのである。利用できるものはどんなものでも利用しなければならない。それがたとえ――恋敵であろうと。


「ダナ、私はライライと共に敵大隊の殲滅に向かいます。その間のダークエルフたちの指揮をお願いします」


「了解しましたっ!」


 ビシッと綺麗な敬礼をするダナに頷いてから、エルルは急ぎ招集されたクランメンバーと共に現地へと向かう。


 現在デザントは、既に敗戦処理に入っているはずだ。

 早く話がまとまってアルノードとのところに戻りたいと、エルルはそのための好材料を作り出すべく、いつも以上に任務に邁進するのであった――。

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