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勝利の美酒


「ふむ、南門付近にアンデッドの影、だと……?」

「はっ、スケルトンの軍勢が確認されたとのことです」


 デザント王国ガルシア方面軍軍団長兼第三軍団長のラガット・フォン・アマリネスは伝令兵の言葉を聞き、視線を上げる。


 テーブルに置かれた地図の上に置かれているのは、デザントを示す赤の駒とガルシアを示す青の駒。

 戦局を予想し、実際の動きとの誤差を修正することは、ラガットの趣味と実益を兼ねたシュミレーションであった。


 対ガンドレア攻略最前線の拠点として、物資集積地に選定されたミンディ。

 ここは第三軍団と第六軍団、各地で掃討作戦を行っている第十三軍団合わせて一万七千強の兵士達の武具や兵糧を守る、最重要拠点の一つだ。

 三個軍団を任され、ガルシア方面軍の軍団長に任命されたラガットは、些細な異変すら見逃すわけにはいかない。

 折角勝ち戦として終えることができるガンドレア戦、ここまで来たのなら瑕疵を残さずに本国へ帰る必要がある。


「その数、優に五千を超えるとのこと」

「五千か、多いな……流石にガンドレアの奴らを殺しすぎたか?」


 戦場において、アンデッドが現れる頻度は決して低くない。

 生前の怨念が溜まりやすく、死体や死後の精神が転化しアンデッドになる例は非常に多いのだ。

 定期的に洗浄を清めることである程度抑制は期待できるのだが、それでも全てのターンアンデッドを防げるわけではない。


 五千もの頭数を揃えるのは、通常なら並大抵のことではない。

 だが今回のデザントは、人間対亜人種の聖戦を謳っている。

 そのためガンドレアを始めとするガルシアの各国ではある種過剰とも言える虐殺が行われており、アンデッドの報告も今までにないほど大量に寄せられている。

 数は今までで最も多いが、アンデッドが五千というのは、実際そこまでありえない数でもないのだ。


「五千となれば、それを統率する上位個体がいるはずだろう。そいつを潰しに行けと、第六軍団長ヴェッケルに伝えろ」

「はっ!」


 第三軍団はラガットの直属の部下達が多く在籍する軍団だ。

 本国に戻った後のことを考えれば、指揮権を持っているもののそこまで関わりのない第六軍団を当てるのが妥当だろう。


 五千ものアンデッドの軍勢となると、まず間違いなくそれを統率する個体が存在するはずだ。

 それがリッチなのか、あるいはハイ・スケルトンなのかはわからないが……二個大隊も出せば問題なく処理はできるだろう。


(今はアンデッドなぞにかまけている暇はないのだ。私が今後デザント貴族としてどこまで成り上がれるかは、この戦役の結果如何で決まるのだから……)


 方面軍の軍団長として出した戦果と損失は、そのまま己のキャリアと直結する。

 無惨な敗北をすれば、有事の際を除き二度と方面軍を任されることはなくなり、出世の道は絶たれることになるだろう。

 だが圧倒的なまでの勝利を収めれば、王からの覚えもめでたくなり、後には末代までの栄光が約束される。


 将来味わうであろう美酒を前にうつつを抜かすラガットは知るよしもない。

 自らが指揮をする軍団に立ちはだかる男が、現在では国内外での評価を大きく上げている『怠惰』のアルノードであることに……。




拙作『豚貴族は未来を切り開くようです』第一巻が6/25に発売致しました!


挿絵(By みてみん)


作品の今後にも関わってきますので、書店で見かけた際はぜひ一度手に取って見てください!


また書店ごとに特典ssも複数あり、電子書籍版もございますので、ぜひ気に入ったものをご購入いただければと思います!

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