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無道ノ零

「『超過駆動オーヴァーチュア』クリエイション・スケルトン」


 俺、『超過駆動』を使い大量のスケルトンを召喚していく。

 所詮は数合わせ、大して手間もかからずに一瞬で五千を超える骸骨兵を呼び出すことに成功した。

 ここらへんまでは、基本的にいつもの流れとそう変わらない。


「我、奈落へ供物を捧ぐ。汝、盟約に従い冥界より来たれ」


 まず最初に行うのは、全てのアンデッドを統括する上位者たるアンデッドの召喚だ。

 セリアが『いっぱいハイール君2号』から魔物の素材を取り出し、地面に放り投げる。

 そして彼女は自分の血を使うこともなく、素材の費消のみでアンデッドの召喚に成功した。

「……」


 喚び出したのは『葬送の五騎士』のリーダーであるガルネリアだ。

 紫色の骨でできた、種族不明の謎の多いアンデッドである。

 相変わらずまったく喋る様子のないこいつは、コクリと頷いて一人でスケルトンの群れを率いて飛び出していく。


 今回はこちらはあくまでも陽動。

 本気を出さず適当に相手をしてもらうつもりだ。


 ガルネリア率いるアンデッド軍がミンディに襲撃をかけていく。

 街の外まで出てくれれば、クレボヤンスを使って様子を確認することができる。

 どうやら突如として現れたアンデッドの軍勢に、明らかに狼狽した様子だ。

 兵士たちと彼らを従えるリーダー格の男達が飛び出してくる。

 要塞の上には、援護すべく魔法の発動を準備している魔導師達の姿がある。


 明らかな異常事態だからか、出てきたのはドワーフを始めとするガンドレア兵ではなくデザント兵のようだった。

 たしかに何が起こるかわからない現状、強く信頼できる駒を配置するのは理に適っている。 だがその手を俺たちに打つのは――悪手だぜ。


「『超過駆動』クリエイション・スケルトン」


 状況は劣勢だ。

 ガルネリア個人の戦闘能力がどれだけ高くとも、所詮は多勢に無勢。

 ガルネリア一体だけでは指揮にも限界があり、手数が明らかに足りていない。


 さすがに近接戦だけでは限界があり、戦力の誘因にも限界がある。

 なので俺はスケルトンの第二陣を半分に分けることにした。


 そして片方をガルネリアへ、もう片方を俺の近くに留めさせる。

 こちらにいるスケルトンたちには魔道具を手渡し、遠距離砲撃を行わせるのだ。


 スケルトンは中心部にある核が傷つかない限りその動きを止めることはないため、魔法を食らっても一撃や二撃でやられてしまうことはない。

 そのためフレンドリーファイアを気にせず、大胆に攻撃をさせることが可能になる。

 というか作れるから、最悪やられても問題ないしな。


「これでようやくまともに戦いらしい戦いになったな……」


 魔道具を装備したスケルトン軍とデザント軍の一進一退の攻防が続いている。

 向こうが俺の方に気付いた様子はない。

 だが『サーチ&デストロイ君』で確認していると、遊撃隊らしきやつらがこちらの魔道具部隊を潰しに向かってきているのがわかった。


 そろそろ潮時、だな。

 俺はスケルトンたちに現場での攻撃を維持させながら、セリアの様子を確認するために後方へ下がった。


 クレボヤンスを使い、戦闘の様子を観察する。

 まだこちらが劣勢か……流石に向こうも地力が高いな。


 徐々にだが、スケルトンの生産が追いつかなくなってくる。

 デザント兵たちは意気軒昂に突き進み、スケルトンの群れの中を単縦陣の形で割って入っていく。

 楔形に突き進む彼らは、知らず知らずのうちに深くまで誘引されていた。

 適宜兵を補充しながら、デザント兵たちを更に奥深くへと向かわせる。

 ガルネリアは戦力を中心に寄せるような形で、真ん中へスケルトンを集中させていた。

 中心部のスケルトンの層が厚くなり、そこだけ戦力が拮抗するような形になる。


 俺が事前に指示していた通りだ。

 あのスケルトンは不気味だが、しっかりと良い仕事をする。


「いけるか?」

「――いけそう、ですっ!」


 ガルネリア率いるスケルトン軍とデザント兵達がぶつかっている最中、当然ながらセリアも何もしていなかったわけではない。

 彼女は指を噛み切り、地面に己の血液で複雑な構築の魔法陣を描いていたのだ。


「喰らえ――『無道ノ零(ライフオンスクラッチ)


 彼女が持っている髑髏の乗った杖――カースドウェポンである『無道ノ零(ライフオンスクラッチ)』の触手が伸び、セリアの柔肌に密着する。

 それはまるで蠢く蛭のように、ドクドクとセリアの血液を吸い取り始めた。


「ふうっ、ふうっ……」


 ただでさえ低血圧気味の彼女の顔は明らかに青白くなっていた。

 けれどセリアは泣き言を言うこともなく、一心不乱に召喚のための用意を整えていく。


 前髪が上がり、彼女の真紅の瞳が露わになる。

 そして魔法陣が赤い輝きを増していく。

 『無道の零』による術式補助により、セリアの死霊術は今の彼女では到達が不可能であるほどの秘奥へと至る。


「召喚……アルティメット・ゾンビ」


 彼女が呼び出したのは、かつて魔物の軍勢(スタンピード)で大隊を震撼させた魔物の軍勢の主。

 大隊のメンバー総掛かりでなんとか封印に成功した最強格のアンデッド――アルティメット・ゾンビである。




拙作『豚貴族は未来を切り開くようです』第一巻が6/25に発売致します!


挿絵(By みてみん)


作品の今後にも関わってきますので、書店で見かけた際はぜひ一度手に取って見てください!


また書店ごとに特典ssも複数あり、電子書籍版もございますので、ぜひ気に入ったものをご購入いただければと思います!

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