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条件


 獣人たちに戦い方を教え始めてから二日後、ダンテさんからの連絡が来た。

 その内容はなんと、報せを聞いてから本人が直接向かっているから、もう少し待ってほしいというものだった。


 更に待つこと三日。なんと本当に、ダンテさん本人が来た。

 アンドルー氷雪国の代表のはずなんだが……なんというフットワークの軽さと、驚かずにはいられない。


「おう、お前があのアルノードか!!」

「はじめましてダンテさん、『辺境サンゴ』クランリーダーであるアルノードです」


 ダンテさんは四十前後の見た目の大男の獣人だ。

 側頭部についているのは犬耳で、イビルさん同様獣人=ケモミミでかわいいという脳内イメージを見事にぶち壊す筋骨隆々っぷりをみせてくれている。


 そして俺の話は、既にガルシアの人間にまで伝わっているらしい。

 俺がシステナやアンドルーで何をしてきたかも、おおまかには把握されているようだった。

 俺たちは今、余人を交えず、降り積もる雪景色の中で向かい合っている。


 長い話になりそうな予感がしたので、魔法を使わせてもらおう。

 魔法で水を出し、雪を溶かし固めてから、その上に固めた土を乗せる。

 これで即席の椅子のできあがりだ。

 土魔法と火魔法で軽く暖炉モドキも作ってっと……。


「立ち話もなんですから、どうぞ」

「すまん、助かる。しかし、器用なものだな……おお、なかなかの座り心地」


 ぽむぽむと椅子を触りながら、ダンテさんが微笑む。

 着ているのは薄い着流し一枚なのだが、どうやら寒さはまったく感じていないようだ。


 気力感知を使うと、彼が相当な使い手であることがわかる。

 先ほど『サーチ&デストロイ君三号』を使ってみたところ、魔力の量もなかなかに多かった。

 アンドルーを取り纏めているというのは、どうやら伊達ではないらしい。


「それで、俺に会いたい理由ってのはなんなんだ?」

「是非、ガルシアの現状について、詳しい話を教えていただければと思いまして」

「敬語は使わんでいいぞ。俺も使えないからな」


 俺もその方が楽ではあるので、お言葉に甘えさせてもらうことにした。

 話を聞いてみたところ、戦況はやはりあまりよろしくはなさそうだ。

 ガンドレアは抜かれてこそいないが、かなり厳しい状態のままだという。


 ただ今のところ、規模の大きな街なんかまでは落とされてはいないようだ。

 やはりシステナを始めとした過酷な環境下で執拗に続けられていたゲリラ作戦で、デザント兵たちの志気がかなり下がっているのが大きいらしい。

 どうやら今のところ、デザント側に『七師』の存在は確認できていないようだ。


「ガンドレアからの救援要請には答えなくちゃならん。アンドルーにもあまり余力はないがな……」


 戦局というのは、長い時間をかけて推移するものだ。

 膠着状態になった状況というのは、何か特別なことでも起こらない限り早々変わるものではない。


 やはり戦局を打開するためには、俺らが直接出向くしかなさそうだ。


 システナとアンドルーで寄り道はしたが、使った時間以上の収穫は得られたと思っている。 補給を邪魔することもできるようになったし、二国の兵士たちの基礎的な戦闘能力を上げることもできた。

 今後のことを考えれば、意味のある布石だったはずだ。


 だが今から必要なのは、直接的な結果だ。

 だからこそ俺たちは――ガンドレアの激戦地へ向かおう。


 直接デザントと干戈を交えようじゃないか。

 なんせそのために、無理を押してこっちまで来たんだからな。


 俺はダンテさんに一つ、お願いをしてみることにした。


「ダンテさん、もしよければその救援に……俺たちもついていって、いいですかね?」


 そのお願いは聞き入れられた。

 とある条件付きで。


「アルノードよ。お前の活躍は聞き及んでいる。故にもちろん答えはYESだ。ただ一つ、条件がある……今回の救援で向かう獣人たちの指揮権を、お前に預けたい。お前のやり方を、人間のやり方というやつを……我々獣人に、教えてほしいのだ」

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