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サボらせない


 気力の感知ができるようになれば、あとは練習あるのみだ。

 己の気力を腹の下の方、丹田の辺りから感じることができるようになった彼らには、それをなんとか抽出して身体の中に回してもらうようしてもらえばいい。


 気力を循環させるやり方は、魔法と同様イメージに拠る部分が大きい。

 なので俺は最もポピュラーである『身体の中を血液のようにぐるぐる巡る感じ』というイメージだけを彼らに伝え、あとは自由にやってもらうことにした。


 恐らく中で一番センスのあるダナさんでも、まだ気力を循環できるようになるまでは時間がかかるだろう。

 というわけで俺はようやく、くるりと後ろに振り返った。

 そこには……。


「というか、私たちもやらなくちゃいけないんですか?」

「ああ、せっかく少し余裕ができたし、やってもらって損はないと思う」

「前にできないって結論は出てるので、ちょっと今更感はありますけど……」


 セリアを除く『辺境サンゴ』の幹部メンバーが揃っている。

 マリアベル、エンヴィー、エルル、そしてライライ。

 四人とも今回はすぐに戦いに出向くわけではないので、パンツとシャツのラフなスタイルだ。


 俺はダークエルフの育成と並行して、『辺境サンゴ』幹部陣を鍛えていくことにした。

 ダークエルフたちに強くなってもらうのは今後のことを考えると当然のことだ。


 だが今後のことも考えると、エンヴィーたちに強くなってもらうに越したことはないという判断である。


 今回俺が彼女たちに教えようとしているのは、


「そもそもの話、私たちはまともに魔力を持ってないわけですから……魔闘気は使えないはずでは?」

「魔闘気自体は使えないだろう。だがそれに若干は劣るだろうが、魔闘気のようなものは使えることができると踏んでいる」

「ようなもの、ですか……?」


 気力と魔力、本来なら相反する二つのエネルギーを一つに合わせることで、限界を超えた力を得ることのできる魔闘気。

 これを使うには、気力と魔力に練達していること、そして両者のかなり精密なコントロール能力が必要となってくる。


 基本的に気力使いたちの中に、魔力を魔導師としてやっていける水準まで持っている者は少ない。

 そもそもの話、魔力があって使いこなせるなら、魔導師になった方が圧倒的に楽で地位も高いからな。


 気力使いというのは、魔導師のような才能のある者と戦えるよう、武人が修練を積んだ末に辿り着ける境地である。


 故に気力使いに魔力を実践レベルで使える者は少ない。


 けれど魔力というのは気力と同じ、生体エネルギーの一種である。

 故に生物として生きている以上、たとえ量はどれだけ微少であったとしても、人間は魔力を持っているはずなのである。


 で、あれば。

 その魔力を気力に練り込むような形で、魔闘気に似た状態を作り出せるのではないだろうか、というのが俺の考えだ。


 原理的には『超過駆動オーヴァーチュア』の逆である。

 あれは魔力に気力をほんの一匙入れるが、こっち気力に魔力を混ぜ入れるってな具合で。


「というわけでお前たちには魔力を感知できるようになってもらうぞ」

「めんどくさい……」

「そんなことしないで、お酒飲んでたいヨ~」


 ここ最近色んなところに駆り出されていたからか、彼女達の反応はものすごく鈍かった。

 まあ何かの専門家が新たな分野に手を出すのを尻込みするっていうのは、学術畑でもよくある話だった。

 一応気力を使いこなせる武人として、魔力に及び腰になるのも当然っちゃ当然だろう。

 けどできるようになれば、今よりずっと強くなれるはずなんだよ。

 普通の魔法と『超過駆動』を使った魔法の威力の違いを見ても明らかだ。


 ぶー垂れるエンヴィーとライライをなんとかなだめすかし、真面目にやろうとしているマリアベルとエルルを誉めながら、俺は魔力の知覚方法について、気力の時と同様に教えていく。


 ただし彼女たちは既に何度も魔導師との戦闘を経験しているからか、外にある魔力を知覚すること自体はできるようだった。

 なので次は体内にある魔力を感知する作業だ。

 中で一番早くできた奴に『俺と一日デートできる権利』をやると言うと、皆死に物狂いでやってくれた。現金というかなんというか……やる気を出してくれたのは間違いないので、何も言うまい。


 結果としてダナさんが気力を知覚して循環させることができるようになったのと、『辺境サンゴ』の面々が自らの身体の中で巡っている微弱な魔力を感知できるようになったタイミングは、ほとんど同じになったのだった――。

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