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月夜


 俺達はダナさんの案内で、周囲の村へ向かっていくことにした。


 俺が彼女を背負って全力を出せば、それほど時間はかからない。

 一日も経たずに、とりあえずアシベ村からほど近いところにある三つの村を訪ねることができた。


 ダークエルフの数も多いが、それに負けず人間の数も多かった。

 四つの村を訪ねてみた結果、大体人とダークエルフの数は半々くらいだった。

 ただ、ダナさんの話を聞けばこれでもかなり割合は変わってしまっているという。

 戦争をする以前は、ダークエルフが全体の九割近くを占めていたそうだ。


 ダークエルフはエルフ同様、皆何百年という年月を生き、魔法技術に長けている者がほとんど。

 彼ら、彼女らは男女の別なく戦場に赴き……そして未だ帰ってきていないという。


 基本的に戦術面での話は、ダークエルフ達からざっくりと聞けた。

 どうやらシステナは方針として、いわゆる遅滞戦術とゲリラ戦を続けていたらしい。


 ゲリラ戦は終わりなき戦いだ。

 村一つ占領しても、その村に住む村人達の中にゲリラがいるかもしれない。


 そう思わせ相手方の不安を募らせ、モラルブレイクを狙う戦術だ。

 実際その戦術はかなり友好だったらしく、システナは勝てなくとも負けることもない泥沼の消耗戦に移行することでなんとか戦い続けていたらしい。


 システナの環境自体がかなり過酷なこともあり、遅滞戦術も有効とのことだ。

 水魔法で水を生み出せばいいとはいえ、こまめに水分補給をしなければ脱水症状になるような砂漠で、変わらない景色を眺めながら延々と歩くのはなかなかに地獄だろう。

 おまけにようやく見つけた村にはゲリラがいるかもしれないというのだから、デザントの兵達からしたら地獄だっただろう。


 けれどデザントは兵と物資の物量作戦によって、強引にシステナを抜けたらしい。

 システナには複数個の軍団が来ていたらしい。

 その数を聞いてびっくりしたのはむしろ俺の方だ。


 俺がトイトブルク大森林の魔物の処理に追われている時に、余剰戦力をガルシア連邦との戦いに向けていたのか……ちょっとくらいこっちに融通してくれても良かったと思う。


 デザントの国の面子的に相当無理をして行軍を続けたようだ。

 今はその損失分を補填するため、ダークエルフを積極的に攫っているらしい。

 そりゃあダークエルフやエルフみたいなデザントじゃ見かけない奴隷なんか、信じられないくらいの高値で売れるだろうからな……。


 にしてもどうやらデザントの奴ら、相当好き放題やっているらしい。

 明らかに外様な俺達の様子を見て、憎らしげな視線を向けている人も多かったからな。



 とりあえずアシベ村へと帰ってくると、今後の対策を練ることにした。

 今回はじっくりと考えたいから、俺一人だ。


 色々なことを考えながら外を歩く。

 だが下手に住民感情を刺激してもあれかと思い、俺が寝泊まりしている家の屋根の上に上って黙考することにした。


 デザントからすれば、ダークエルフを始めとするあちら側にいない稀少な亜人達を捕らえて、せめてもの軍事費用の補填をしたい。


 そのために無理な徴発や誘拐も多数起きているということだった。

 今はガルシアを奥へ奥へと進んでいるからそこまで総ざらいにはなっていないが、下手にガルシアが崩れようものなら、人的資源は根こそぎいかれることになるだろう。


 とりあえずガルシアを潰すわけにはいかない。

 ……で、あるのなら。


 俺にできることはやはりガルシアを助けることだけだろう。

 ――もちろん、俺なりのやり方で。


 村の中にも砂は吹き付けてくる。

 外套に砂粒が入り込むのが鬱陶しいので、魔法を使って風のバリアを作ってみることにした。


 するとかなり快適だった。

 よし、それなら今度は風魔法を込めた魔道具を作ってみようか。


 そんなことを考えているうちに、砂嵐は止んでいた。

 見上げれば空には満月が輝いている。


 見れば遠くで、ダナさんが月を見上げていた。

 同胞達が殺され、捕まえられている中で、彼女は何を思うのだろうか。


 俺の下手な言葉など、なんの慰めにもならないだろう。

 見つからないうちに退散しようと屋根を飛び降りようとすると、ダナさんと目が合った。


 ……気付かれてしまっては仕方がない。

 俺は若干の気まずさを感じながらも、彼女に近付いていくことにした。

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