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魔力水


 とりあえず、まずは水の調査をしていく。

 その道で長年食っている人たちのように水質調査のような本格的な調査ができるわけではないが、魔法使い的な観点からのアプローチであれば俺にだってできる。


 どのくらいの魔力が込められているのか。

 何か既に、魔法的な力が付与されているのか。

 そしてこの水はどのくらいあって、集まることでなんらかの悪影響をもたらすことはないのか。

 仮説の上に仮説を重ね、続けて検証を行うことでその躓きと階段を一つ一つ外していく。


 そしてわかったこと。

 この魔力の籠もった水は、純粋に魔力が込められただけのただの水だ。

 魔力がこもってはいるので、飲用し続けて身体に自分のものではない魔力が溜まり続けることで、村人たちに悪影響をもたらしたものだと考えられる。


 ただ、恐らくは地脈の影響だろう。

 どういう性質の変化があったのか、内側に留まっている魔力は、通常水が許容できる含有量をはるかに超えている。


 この水――魔力水と呼ぶことにしようか――は通常の人の飲用には適していないだけで、恐らくは俺やセリアのように元から魔力を体内に留めることが問題がない人であれば、問題なく摂取することができる。


 そしてこの魔力水には、いわゆる魔力的なクセというやつがない。


 例えばミスリルやオリハルコンといった魔力含有金属の中には、魔力に指向性を加えてあげたりしなければ十全に性能を発揮してくれないことがある。

 僻地とか大量の魔物がいる鉱山とか、そう言った変な産地から出てるやつなんかがそうなりやすい。


 例えば魔道具にもクセというものはあって、それが性能の善し悪しに繋がり、使い手を魔道具の方が選ぶなんてことになったりすることも少なくない。


 けれどこの魔力水は良い意味でクセがないため、どんな用途にも使える。


 例えば、魔力回路を彫り込む時にこれを染みこませることで魔力の通りを良くしたり。

 魔石を使用する魔道具に、魔石の代わりに魔力水を流し込むことで代用品にしたり。

 俺の場合は魔力が減ってきた時に、魔力ポーションの代わりに使うこともできた。


 似たようなものは今まで見たことはない。

 多分これ、相当なレアアイテムだ。


 検証をしてみた結果、俺は当初持っていた魔力水から魔力を抜いてただの水として飲用に耐えるものへ変える、という考え方を捨てることにした。


 実際問題、ただ水を出すだけであれば、それほど問題なく作ることができる。


 俺はまずとりあえず、手持ちの中で一番まともな容器を取り出す。

 こいつはエルダートレントと呼ばれるトレントの親玉みたいなやつを倒し、その素材を使って作り出した樽だ。


 まずは樽の金具を外していき、一度木材を並べ直す。

 巻物を伸ばしていくように木番を一列に並べ、そこに魔力回路を彫り込んでいく。

 魔力回路をなるべく精緻に、魔力の伝達効率がよくなるよう気を付けて彫っていく。

 あまり削りすぎて木材が壊れやすくなってしまわないよう、細心の注意を払った。


 そして仕上げに、魔力回路の中に先ほど採ったばかりの魔力水を入れてみることにした。

 魔道具に対してどんな影響を与えるのか、実際に作って確かめてみようじゃないか。


「あとはここに付与魔法をかけてっと……」


 樽に付与する魔法は、俺が水瓶を満たしたのと同じクリエイト・ウォーター。

 初級魔法なので魔力の使用量は少ない。

 なるべく少ない魔力で動くよう、付与する魔法の微調整をすることも忘れない。


 そう何度も修理修繕はできないだろうし、この砂漠で採れる魔石で賄えるように効率も気にする必要がある。

 細かい仕事をしながらも、乱用にも耐えられるように作らなくちゃならない。


 気にしなくちゃいけない部分が多く、魔力水の扱いにも少々難儀したので結構な時間がかかってしまったが……なんとか日が落ちる前に、魔道具が完成してくれた。


 名前は……今回はシンプルにいこうかな。

 よし、こいつは今日から……『みずみずウォーター君』だ!


 クリエイト・ウォーターの効果が付与されていて、効果を高めるために魔力水も使われている。

 これ以上の名前はないだろう。


「あ、あはは……そうです、ね?」


 ダナさんは苦笑をしながら、何故か疑問形でそう言って、首を傾げるのだった……解せぬ。

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