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 見れば襲われているのは、深くローブを被った女性だった。

 今にも食いかかろうと襲いかかっているのは、サンドワームと言われる魔物だ。

 捕食用の牙だらけの口が端っこについてる、でっかいミミズだな。


 ランクはC程度、わざわざ魔闘気や『超過駆動』を使う必要もなさそうだ。

 だが接敵までに距離があるな、魔法を飛ばしていては間に合わないかもしれない。


「オキシジェンサークル!」


 なので風魔法のオキシジェンサークルを発動。

 こいつは平たく言えば、一定エリアから酸素を抜く魔法だ。

 しっかりと魔法の制御をして、女性をエリアから外して使う。


 酸素を吸えなくなって、生きていける生き物はいない。

 魔物とてその例外ではなく、あっという間にサンドワームは呼吸困難になりもがきはじめた。


「大丈夫ですかっ!?」

「きゃっ――は、はいっ!」


 サンドワームが暴れて押しつぶしてしまわないように、俺は女性を抱き上げる。

 そして足に力を込めて、思い切り後ろの方へと跳んだ。


「ファイアアロー!」


 指先をクッと曲げてから、炎の矢を放つ。

 動きが鈍くなったサンドワームにそれを避けるだけの余力はない。

 炎矢がトドメの一撃になり、サンドワームは最後にピンッと身体を伸ばしたかと思うと、そのまま息絶えた。


 トンッと軽い足取りで着地。

 しかし軽いな……ちゃんとご飯とか、食べられているんだろうか。

 腕に抱えている彼女の線は細く、その身体は日に焼けてか褐色だった。


「あ、ありがとう、ございます……」

「いえいえ、困っている人を助けるのは当たり前のことですから」


 そんなことを考えながら、抱き上げていた彼女を下ろす。

 その間際、俺には見えてしまった。

 彼女がフードの下に隠していたのであろう――長い耳が。


「ダークエルフ、ですか……」

「――っ!?」


 ダークエルフ。 

 ガルシア連邦に多数所属している亜人達のうちの一つ。

 この熱砂の国システナを始めとした、乾燥地帯や砂漠地帯などに居を構える少し変わった種族だ。


 俺にはエルフの知り合いは何人かいるが、ダークエルフとはあいにく今まで接点がなかった。

 あいつらが言うことには、ダークエルフは尊大でおごり高ぶっているって話だったが……どうにも話が違うな。


 ビクッと身体を揺らす彼女を見て、失礼と頭を下げる。

 システナの国境地帯で、たった一人で魔物に襲われていた少女……彼女の境遇は、なんとなく想像ができてしまう。


「そう警戒する必要はないですよ。俺はデザントの人間ではないので」

「ほっ……」

「元デザント、ではあるのですが」

「――(ビクッ!)」

「すみません、怖がらせるつもりはなかったのですが……」


 その反応から察するに、恐らくはデザントから逃げている最中なのだろう。

 全部を正直に言うべきではなかったのかもしれない。


 まあなんにせよ、彼女がこのシステナで出会った初めてのガルシア国民だ。

 とにかく今のガルシアがどうなっているのかを教えてもらいたいところだな。


 真剣な表情を作って言葉を吟味していると、くうぅ~というかわいらしい音が鳴る。

 見ればその音の出所は、ダークエルフの彼女の腹だった。

 どうやら相当にお腹が空いているらしい。


 恥ずかしいのか、褐色の肌を少しだけ朱に染める彼女を見て、俺の方は思わず噴き出してしまった。


「ちょうどよかった。俺たちもそろそろ飯時だなと話していたんです。もしよろしければ一緒にどうですか?」

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