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システナ


 ガルシア連邦というのは、真実をぶっちゃけてしまうのなら、戦争に負けた敗残者達によって作られた国だ。


 その支配地域はデザントやその前身の国に戦争で負けた亜人達や、政争に負けた元大物達なんかが、逃げられる場所がいよいよなくなったというところで、仕方なく逃げていった場所となっている。


 逃げる場所はなくなったはずなのに、どうして南には逃げられたのか?

 その答えは簡単だ。


 ――南方の地域に、ほとんど人が住んでいなかったからである。

 ガルシア連邦の地域は、人が不自由なく生きていくことが難しいような環境が多い。


 砂漠地帯では常に水不足に悩まされることになるし、ツンドラ地帯ではしっかり防寒対策を施さなければ凍傷で身体保たないし、思えば活火山が山脈を形成し地震が頻発する地域なんかは、普通に火山灰や火砕流で死んでしまいかねない。


 ちなみに南方だけがここまで過酷な環境だらけなのは、ヌン同様地脈が関係しているらしい。

 要はこの星が使っている天然の魔法で、連邦のあたりの地域は気候や環境がめちゃくちゃになってしまっているのだ。


 まあそんな場所で、栄えるような強力な国ができるはずもない。

 連邦があるあたりは、人間が住んでいくにはちょっと過酷すぎるから今まではそもそも住もうという奴らがいなかった。


 けど他に行く場所がなくなった奴らは、そこで暮らしていくしかなかった。

 そんな者達が寄り合い所帯を作っているうちにできたのが、ガルシア連邦という連合国家なのだ。


 俺達がやってきたシステナは、中でも一番キツい地域かもしれない。

 システナはその別名を、熱砂の国という。


 熱砂がただただ広がっていて、オアシスの数も極めて少ない……そんな地獄のような環境だ。

 水魔法使いがいないとそもそも進むことすら難しい、砂漠の国だ。







「なんだか……秘境に来たみたいだな……」


 ザザザザザッ!


 吹き付ける風と、それによって飛ばされる流砂。

 熱風の勢いが強いため、飛んでくる砂は放置できないほどに量が多く、速度も速い。


 見えないほどに微少な砂粒も多いだろうから、こんなものを常時受けていたら間違いなく失明するだろう。


 俺達はゴーグルを装備してから外套を羽織り、ゆっくりゆっくりと前を進んでいた。

 ちなみに外套には『温度調節』が組み込まれている。


 さすがに外套につけられるものなのでそこまで高性能ではないが、少なくともガンガン汗を掻いたり、目が霞んで前が見えないという事態は避けられている。


「システナに住む人達は……これに道具もなく耐えているんだろうか」

「さすがに無手ってことはないと思うけどね」


 サクラはキレイに透き通ったゴーグル越しに、熱砂を見つめていた。

 エンヴィーは掻いた汗を手の甲で拭ってから、ピッと手を振る。

 掻いた汗はすぐに飛ばさなければ、白い線になって残ってしまう。

 どうやら彼女的にはそれが我慢ならないようだ。


 システナで暮らす者達……か。

 たしかに普通の人達からすれば、いくら他に居場所がないとはいえ、システナで暮らしていくのはそう簡単なことじゃないだろう。


 魔力で強化したガラスは高値だ、そうポンポンと作れるもんじゃない。

 恐らくシステナの民が使っているのは、緑がかって透明度も低いゴーグルだろう。

 温度調節のできる外套もなく、熱波が当たる顔からでもわかるこのきっつい高温に耐え続けているんだろう。


 既に結構な時間歩いているはずだけど、オアシスどころか水が出そうな水源の一つもない。

 水魔法使いが常に一人はいないと、結構どうしようもなさそうだ。


 俺達はヌンを抜け、間違いなくシステナには入っている。

 だがシステナを始めとして、ガルシア連邦の情報はほとんどない。

 向こうからこっちにやってくるような物好きはいないし、そもそも過酷な環境や、恐らくはそこで生き抜くためにガルシアに住む人達が作り上げてきた部外者への強い警戒のせいで、諜報員達の成果も芳しくない。


 なので俺達がこうして実地でなんとか確かめながら、探り探りで進んでいくしかないのだ。

 できれば早い段階で、第一村人を発見しておきたいところだな。


 デザントはシステナ攻略でかなりの兵を失ったみたいだが……これを直に経験すればたしかに頷ける話だ。


 ただこのシステナに……そんなに価値はあるんだろうか?


 どこかに鉱山でもあれば話は別だが、ガルシアにデザントの内需を満たせるほどにデカい規模のものはないはずだ。


 もしそれをガルシア連邦に住まう奴隷達の売却益で賄おうとするのなら……俺達が今から見ることになる光景は、間違いなく面白いものではないだろう。


 覚悟をしながら……む?

 俺の魔力感知に反応が二つあった。


「きゃあああああああああっっ!」


 遠くから聞こえてくる声。

 どうやら女性が、魔物か何かに襲われているようだ。


「よしっ、とりあえず助けに行くぞ」

「あはは、これで恩を売って情報をもらうネ!」


 こらライライ、そんな直截な言い方をするんじゃありません。


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