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 霊峰ヌンには、天然の認識阻害の魔法がかかっている。

 自然由来の魔法といいうものは規模も効果もデカい。

 ガルシア連邦がトイトブルク大森林からの魔物の侵攻を免れているのは、このヌンの力に拠っている部分が大きい。


「地脈の魔力……いずれはこいつを利用して、何か一発ドデカいことをやってみたいものだな」

「隊長がまた変なこと言ってる~!」


 エンヴィーが笑いながら、グッと背筋を伸ばす。

 今はトイトブルクを抜けて、ヌンとの間の広い空間を歩いている。

 どうやらエンヴィーは、急に戦う機会がなくなったのが不満らしい。


 暇を持て余してぶー垂れている彼女は、先ほどまでいたトイトブルクの方をジッと見つめている。

 ダメだぞ、そっちに行っちゃ。


「地脈を何かに応用とか、そもそもできるものなんですか?」

「まあ、今のままだと無理だとは言われてるな」


 エルルの言葉に正直な所感を述べる。

 地脈をなんとかして利用しようという実験はいくつもあったが、今のところ全て失敗していたはずだ。


 ――この世界には地脈と呼ばれる、ほぼ無尽蔵の魔力が存在している。

 自然が起こす魔法とは、この地脈によって引き起こされるものがほとんどなのだ。


 地脈から思いのままに魔力を引き出すことができれば、それは尽きることのない魔力タンクを手に入れたに等しい。

 こいつを使おうとデザントは結構な巨額を投じて研究を続けている。

 今のところ上手くはいってないけどな。


 けど今後デザントと戦えるようにするためには、ちゃんと向こうくらい研究にも金を投資をしなくちゃいけないよな。

 そのための資金供出を……いや、下手に金の流れを複雑にするよりも、俺達で始めた方が早いか。


 幸いリンブル防衛のための魔道具作成は、俺達の手からほぼ離れている。

 空いたリソースを使って、研究開発を進めるのがいいだろう。


「隊長、そんなことを言ってたら始まりの魔法使いに狙われちゃいますよ」

「ははっ、そうだな」


 エルルがあげたのは、有名なおとぎ話だ。

 この世界に未だ魔法使いが存在しなかった頃、一人の人物が魔法を使った。


 彼は地脈を使い、この世界の無限に等しいエネルギーを利用して魔法を使い、人間を絶滅の危機から掬い上げたという。


 世界で最初の魔法使い――始まりの魔法使い、エンタングル。

 そんなおとぎ話を思い出してしまう。

 はるか昔の話を思い出してしまうほどに、悠久の時を生きてきたヌンの姿は雄大で美しかった。


 至る所に水脈があり、木々は青々と茂っていて、そしてどことなく神聖な感じが漂っている。

 周囲に魔物の姿はない。

 霊峰ヌンにかかる認識阻害は、相変わらず有効なようだ。


「まあ、人間相手だとその効果も半減するわけだが」

「人類の、叡智」

「これだから人間はぁ……風情というものがないですよね。だからアンデッドの方がいいんです」


 魔物相手なら十分な効果を発揮するが、人間には知恵がある。

 方位を指し示してくれる魔道具『方位まぐねてぃっく!』を使えば、道がわからなくなることもない。


 でもセリア、アンデッドには風情もクソもないと思うぞ。


「よし、とりあえず行くぞ、油断はしないようにな」


 今回一緒の『辺境サンゴ』メンバーは、エンヴィー、マリアベル、エルル、セリア、ライライにサクラを足した六人だ。

 今回は経験を積ませるために、サクラも同行している。


「しかし……トイトブルクを抜けるのはここまでしんどいのか……」


 俺やアンデッドに背負われていたセリアを除いて、他のみんなはわりと余力を残している。

 けれど余裕そうな彼女たちとは違い、サクラの方はかなり息も絶え絶えだった。


「けどサクラもずいぶんと強くなったよな」

「そ……そうか?」

「ああ、だってさっき、一撃でワイバーンの首を落としてただろ?」


 トイトブルクの魔物は、本来よりも強さはワンランク上。

 そんな魔物達を相手に、サクラは大怪我をすることもなく戦うことができていた。

 恐らく現段階で既にAランク冒険者以上の力はあるだろう。



 ヌンを抜けてからの戦闘に戦力的な不足はない。

 けどこちらの道を、既にデザント兵達が抑えている可能性は十分に考えられる。

 侵攻路として確保している可能性はそこまで低くないしな。

 デザントの兵達とかち合うことになったら面倒だ。

 俺達はリンブルのオリハルコン級冒険者だからな。

 なんとかして、彼らに見つからないようにガルシアに入らなければならない。


 けれど俺が危惧していたような偶発的な遭遇はなく。

 俺達は何事もなく、ガルシア最北の国システナへ到着するのだった。

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