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ガルシアへ


 俺達は一路、ガルシア連邦へと向かうことにした。

 向かう方法は、一応二つある。


 まず一つ目は、西側から船に乗り、海路でガルシアを目指す形だ。

 こちらのメリットは、ガルシアで一番面倒な複雑に変わる地形や気候の影響を考えず、すぐにガンドレアへと向かうことができる点だ。


 そしてデメリットは、船なんかに乗って大星洋へ乗り出せばデザントやオケアノスの船団に速攻で撃滅されるところだ。

 冷静に考えて、デメリットがでかすぎるんだよな。


 これにもし諸外国の領海を渡ったことがバレれば国際問題に発展しかねないというおまけもついてくる。

 つまりこっちは余裕で却下である。


 『ざぶざぶホエール君』を使うという手も一応あるにはあるが……あれは居住性があまりにもよろしくない。


 シャワー室もないし、定期的に浮き上がって空気の入れ換えをする必要もある。

 『辺境サンゴ』の面々からの評価も戦闘力と隠密性以外は散々なので、あれを使うと露骨に志気が下がる。

 『ざぶざぶホエール君』は標的を狙う海の暗殺者としては非常に有用だが、長期間の航行にそもそも耐えられる設計をしていない。


 使いどころがかなり限られるんだよな。

 一度シュウあたりに投げて、色々と改善してもらうのも面白いかもしれない。


 なので俺達はもう一つのルート――トイトブルク大森林を経由して、霊峰ヌンを抜けてからガルシアを目指すルートを取ることにした。

 トイトブルクに入るのは、実は結構久しぶりだったりする。


 懐かしき我が故郷……なんてな。


 下手をしたら俺が一番長くいた場所は、ここかもしれない。

 この瘴気まみれの空気に居心地の良さを感じる俺は、きっとおかしいんだろうな。


「ぜえっ、ぜえっ……あ、アルノードさん! 息が、息が苦しいですぅ」


 荒い息を吐きながら、セリアがアンデッドのような顔をしている。

 霊峰ヌンを目指しているからか、大森林の高度は徐々に高くなっている。

 まだそこまで高いはずではないのだが、既にグロッキー気味だった。


 彼女がぺいっと手を振ると、後ろに控えていた『葬送の五騎士』のうちの一人が、近付いてきていたキマイラの首を刈り取る。


 一際豪華なリーダー格の骸骨は少し離れた場所へ行き、ワイバーンを引きずりながら持ってくる。


 同行しているエンヴィーやマリアベル達もめいめいに魔物を狩る。

 とりあえず倒してしまえば周囲から魔物の影はなくなるのだが、少し歩けばまた何匹もの魔物が出現してくる。


「魔物の数は――まだ減る様子はない、か」


 俺が一段落してからやりたかったことはいくつかある。

 そのうちの一つが――このトイトブルク大森林の探索だ。


 この魔物の大量発生には、なんらかの理由があるのではないか。

 最近俺はそんな風に考えることが多くなった。


 この大量の魔物の出現に、どこか作為的なものを感じることが多いのだ。

 例えば、魔物達の強さのバラツキ。


 リンブル近辺の森からは強くともAランク前後の魔物までしか出てこないが、デザントの近くからだとランクでの判別が不可能なほど凶悪な魔物が出現する。


 これは魔物の生態的に少しおかしなことだ。

 それだけ強さにバラツキがあるのなら、トイトブルク大森林という地域は強い魔物達の縄張りになるはずだ。


 ある程度の強さしかない魔物達は捕食される側に回ってもおかしくはない。

 けれどリンブルの方では、まるで彼らが食物連鎖の頂点に立っているかのような状態だった。


 本当なら、奥深くに入って調査をしなくてはいけないのだ。

 けれどデザントの時は命じられたのが防衛だったから、進めなかった。

 積極的防衛策の名目で申請を出しても蹴られてたからな。


 俺が一番危機感を感じているのは、時折感じる強い魔力と気力の反応だ。


 向かったとしても既にそこには痕跡すら残っていないから、最初は勘違いだと思っていた。

 けれどそんなことを何度も繰り返していれば、さすがに勘付く。


 何者かが、俺達と魔物の様子を遠巻きに見物しているのだと。

 彼らはいったい何者なのか。


 高い知性を持った魔物なのか。

 それとも……。


(まあなんにせよ、今はガルシア連邦の救出が優先。こっちはまた今度だな)


 俺は疑問をひとまず棚に上げて、先を急ぐ。

 こちらを試すかのように感じる反応が、また今回もあった。


 こいつは不思議なことに、俺以外の『辺境サンゴ』のメンバーは感知ができない。

 これは俺に送られているなんらかのメッセージ……と考えるのは、さすがに深読みが過ぎるだろうか。


 追っ手やトラブルに遭遇することもなく、無事に霊峰ヌンへと辿り着くことができた。

 ヌンにやってくる直前に、謎の反応は消えている。


 俺は釈然としない思いを抱えながらも、ガルシア連邦へと足を踏み入れるのだった――。


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