盤石
王都へと戻ってきた。
俺を出迎えてくれたのは、にこにこと笑うソルド殿下だ。
「おお、よくやってくれたな」
「いえいえ、自分にできることをしたまでです」
「そう謙遜するな、デザントの魔導船なんぞを誘致されたらとんでもないことになっていただろうからな。まったく、そんなこともわからんやつらが多すぎる。人材の払底はリンブルの悩みの種だよ」
どうやら、王位継承権を始めとする諸々には決着がついたらしい。
晴れやかな顔をするソルド殿下を見れば、結果がどうなったかなど聞く必要もないだろう。
最初は何故俺がランドル辺境伯領へ行かされることになるのか、正直疑問だったんだが……要はデザント戦力の撃退のために駆り出されたってことなんだろうな。
どうして辺境伯領の情報を手に入れることができたのかとか、色々と疑問は尽きない。
多分暗部とかが頑張ったんだろうな、『通信』ばりに速い情報伝達ってどんだけだよ。
ちなみに既にジョットの方は引き渡してある。
あ、そうだ。ランドル辺境伯がどうなるのかは聞いてなかった。
一応口添えだけはしておいたんだけど……。
「何、案ずるな。辺境伯家は領地の大部分を剥奪の上子爵まで落とすが、家自体はちゃんと存続させる」
……まさか辺境伯の命が助かるとは。
反逆罪となると基本的に御家取り潰しになるから、なるたけ減刑できるよう嘆願しようとしたんだが……。
話を聞けば、どうやらソルド殿下は今回の一件を全てデザント王国の策謀ということにしてしまうらしい。
つまり罪を全部なすりつけるから、国内にはそもそもの罪科がなくなってしまうわけだ。
さすがに張本人であるジョットは助けられないらしいが、まああいつはアイシア王女殿下への欲に溺れて色々ととち狂った真似をした張本人だからな。
辺境伯には我慢してもらうしかないだろう。
「そう言えばアイシア殿下の方はどうなったんですか?」
「ああ、あいつは数日のうちに自室で服毒自殺だな。外患誘致はさすがにシャレにならん。父上も泣きながら許してくれたよ」
「そうですか、それなら安心ですね」
「音をあげて蹶起するタイミングがここで助かったよ。数ヶ月前だったら、もっと面倒だった。お前が来る前の王党派だったら、どうとでもなっただろうに。国内外の事情も関係なく、自分に何かないと動かないアイシアの自分本位をこれほどまでにありがたいと思ったことはない」
これで派閥問題と王位継承問題、リンブルを悩ませていた二つにカタがついたことになる。
リンブル国内の問題は、ほとんど解決したな。
であればあとは外に目を向けるだけでいい。
俺が個人、というか『辺境サンゴ』でやらなくちゃいけないと思っていることはあと一つだけ。
それができるタイミングもそろそろ近付きつつある。
最近はもう、リンブルの街を守るためにうちらが出張する必要はほとんどなくなったって話だし。
「ちなみに禅譲は来週に行う。以後俺はリンドル三世を名乗ることになるから。なに、ソルドの名も残すから、私的な場では呼び方はソルド王で構わんからな」
――ちょっと殿下、さらっと爆弾発言するの止めてもらえませんか!?
とまあ俺達がわりと急いで帰ってきた時には、既にソルド殿下はほとんど全ての用意を整えて待っていたのだった。
アイシア王女殿下は失意のうちにお隠れになり、そしてその数日後。
現王が退位しソルド殿下が即位が同時に行われる式典が催されることになる――。
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