一方
これを戦いと言っていいのかどうか……戦いの推移を見ている俺は、なんと言うべきか非常に表現に迷う。
何せ同じ土俵にすら立つことはなく、こちらが一方的に攻撃を加えることができているのだから。
それほどまでに、『ざぶざぶホエール君』の力は圧倒的だった。
「一番、二番沈没しました。海上掃討開始!」
俺達は『ざぶざぶホエール君』を使い、攻撃を開始した。
艦載されている攻撃手段はたった一つだけ。
風魔法によって加速させた弾丸を発射。その弾丸が海から受ける抵抗を水魔法で軽減させ、速度を落とさずに船底にぶつける。やってることはその行程を何度も繰り返すだけだ。
あ、ちなみにこの発射する弾丸には『爆裂』を込めているため、着弾と同時に衝撃を周囲に撒き散らして船体にダメージを与えることができるようになっている。
『ええいっ、何やってる!』
『敵影はまだ見つからんのか!』
『水中呼吸の使える魔導師を出せ!』
『無茶言わないでください、そんなことさせてもすぐに凍死するだけです!』
今回は『ざぶざぶホエール君』以外の魔道具もお試しに使っている。
これはその一つである、置き型の『通信』の魔道具だ。
こいつは集音に特化しており、少し離れたところの音を集めることに長けている。
双方向通信でもないので、仮に向こうに存在がバレたとしてもこちらのことを逆探知されたり、こちらの情報がバレることがないことが利点だ。
そうだな、『通信』というよりは音を盗み聞く――『盗聴』の魔道具って感じか。
いいなぁこの感じ。
新たな概念が生まれ、そこから派生してニューウェーブが起きる瞬間というのは、やはり魔道具職人として何よりも生を実感する。
この『盗聴』の魔道具は、映像の機能をカットしたことで廉価で作れるようになったため、比較的安価で配ることができるようになっているらしい。
でもこれが安易に配られまくったら……それこそプライバシーもへったくれもない世の中が誕生する可能性があるな。
『盗聴』を防ぐための魔道具の方も開発するよう、シュウには言っておかないと。
あいつの発明はオリジナリティがあって大変よろしいんだが、いかんせん自分がしたいことにリソースを割きすぎているせいで頭でっかちになったり、後先考えてないことなんかが多いのが玉に瑕だ。
『敵影、発見できません!』
『魔力感知は!?』
『やってます、想定以上に強い『隠蔽』持ちがいる模様!』
悲鳴に似た声が上がるのを耳にしながら、攻撃の継続を指示する。
『ざぶざぶホエール君』には『隠蔽』を始めとした複数の魔法が込められているため、かなり色々な力を持っている。
今回は主釣りで魚に興味を持った俺が力入れて作ったからな。
海上からの探査はまず通らん。
『頑健』が入ってるからかなり奥深くまで潜水することもできるし。
魔法による弾数も結構多い。
故に弾切れを心配することもなく、一方的に攻撃を加え続けることができる。
『二番、三番轟沈! 四番被弾、損傷甚大!』
『これは……控えめに言っても、リンブルが海の覇権を握れるのでは?』
『いやぁ、そんなに甘くないだろう』
結局のところ使われてる技術自体はそれほど難しいものじゃないから、多分結構簡単にパクれるだろうし。
したら物量差で今度はこっちの船がまるっと潰されるのがオチな気がする。
かなり強力な兵器だけど、今後のことを考えると使い処はよく考えないといけないな……。
そんなことを考えているうちに、船員から船を全艦沈めた旨の通達が入った。
そこからは掃討だ。
けれど白旗を上げている奴らにトドメをさすのはメンバーの精神衛生上あんまりよくなさそうなので、俺が海の上を歩きながらささっと一人で済ませることにした。
これであとはジョットを連れて王都に帰るだけだ。
アイシア王女殿下も、そろそろ諦めてくれると助かるんだがなぁ。
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