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ランドル


 俺達は街を更に移動していき、ランドル辺境伯の領都であるランドリアへとやってきていた。


 一番最初の街と比べればたしかに活気はあるが、それでも王都なんかと比べれば寂れているのは変わらない。


 ただ領都まで来ると、さすがに警戒が更に厳しくなっており、ただのさすらいの冒険者という設定では中に入るまでにかなり厳重なチェックが入ることになりそうな気配がした。


 そのため俺たちは身分を明かし、親書とそこに押されている封蝋を見せることで無事中へ入ることができた。


 そして今、俺はランドル辺境伯本人と相対していた。


「ふむ、お前が『辺境サンゴ』のクランリーダーのアルノードか……」


 辺境伯の周辺のガードはさすがにがっちりなようで、エルルたちは別室で待機、そして俺の方も手荷物から何から全てを預かられてしまっている。


 だが実際の所まったく問題はない。

 今の俺のローブには、既に空間魔法が付与されていて、『収納袋』になっているからな。


 以前ウルスムスと戦った時の技術は既に確立していた。

 恐らく今後はもっと色々な形状をした『収納袋』が開発されていくことになるだろう。


 目の前に居るランドル辺境伯は、がっちりとした体格をした壮年のおじさんだ。

 女性のクランメンバーなんかはおじ様って呼びそうな感じである。


 感知の反応から考えると、気力もなかなかにありそうだ。

 恐らく鍛錬は欠かしていないんだろうな。


 だがいきなりドンと現れるだなんて、結構豪胆な人なのかもしれないな。

 俺の話は色々と聞いているだろうに、まさか辺境伯本人がこうして顔を出すとは。


 こういう武人タイプの人、嫌いじゃないんだよな。


 俺は下手に策を弄してくるようなやつよりも、こうして真っ直ぐにこちらを見据えてくる人の方に好感を持ってしまうタイプなのだ。


「とても強そうには見えないな。だが噂は色々と聞かせてもらっている」

「ありがとうございます。こちらがソルド殿下より直々に預かった親書になります」


 俺が渡した手紙を、使用人が受け取ろうと近付いてくる。

 貴族の人間が平民から直々に物を受け取ってはいけない、って一応決められてるからな。


 俺が敵方の王党派である以上、ある程度虚勢を張る必要もあるんだろうな。


 ……なんていう風に思っていると、ランドル辺境伯が予想外の行動に出る。


 使用人に渡ろうとした手紙を、のっしのっしと歩いてきた彼が直接掴んでしまったのだ。

 人を経由せずに貴族が物を受け取るのは明らかな礼典違反だ。


 彼も彼で、なかなかに面白い人物であるらしい。


「ここまできて今更取り繕う意味もあるまい。お前らは下がっていろ」

「で、ですが……」

「元『七師』のアルノードが本気を出せば、今頃このランドリアは灰燼に帰しておる。お前らが居たところで、何も変わりはせんよ」


 辺境伯はそれだけ言うと、警護のために中に入ってきていた兵士達を下がらせてしまった。 残るのはわずかな従者と俺たち二人だけだ。


 彼は渡された親書を読み進め、ふむと小さく呟いた。


「委細承知した。王太子殿下の慈悲深き言葉には感謝の念を禁じ得ない」

「では……」

「俺にはアイシア王女殿下は裏切れん。なので一つ提案をさせていただければと思う。この首一つと引き換えに、ランドル辺境伯領の存続を許してはいただけないだろうか」


 それだけ言うと、ランドル辺境伯は自分の首筋にナイフを突き立てようとする。


 俺は思わず全力で気力を使い、彼の手を掴んでしまった。


 おいおい、なんだよこの辺境伯!

 見た目と違って、行動がむちゃくちゃすぎるぞ!?


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