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波乱


 北伯であるランドル辺境伯の軍は、その地形柄から陸軍よりも海軍の方がその数は圧倒的に多い。


 魔導船が空を飛んでいたという、古の魔法都市。

 その頃の技術が廃れて空が人の領域でなくなっている今では、流通や交易というもののうち、海を経由するものの重要度合は著しく高い。


 小麦を始めとする各種穀物なんかは、陸路での荷運びにも限界がある。

 海を脅かされるということは、そのまま都市の食糧事情なんかの悪化に直結してしまうからだ。


 そしてリンブル王国の海における基本方針は、『デザントとオケアノスを刺激しないこと』という一点に立ち、常に策定されている。


 そもそも国力の桁が違い、魔法を使うことで馬力から造船技術までたちうちできないデザントと海でやり合っても勝てないわけで。


 ほとんど全ての軍を海軍に投入しているオケアノスはこと海軍力だけならデザントにも勝っているわけだから、こちらともそもそも勝負の土俵に立つこともできてはいない。


 そのためリンブルは、ある程度……それこそ海賊なんかが出ない程度の海軍力だけを身につけよう、そして両国を海では刺激しないようにしようと動いてきた。


 幸い海の上ではオケアノスとデザントがバチバチにやり合ってくれている。


 お互いともなんとしてでも制海権を取ろうとしているし、大星洋の守護者を自称しているから、過度に軍拡でもしない限りはリンブルの通商を守ろうとさえしてくれていた。


 おかげで、リンブルは大過なく過ごすことができていた。


 けれど最近激しくなってきたリンブル王国の王位継承者問題。

 王位継承権第一位を持つソルド王太子殿下に対抗するような形で、各地の元豪族達と第一王女アイシア殿下が手を組んだ。


 そしてそれを、日和見主義の中立派と彼らが擁するノヴィエ第二王女が窺っているというわけだ。


 俺がリンブル国内のゴタゴタから離れてのんびりとスローライフを送っている間に、何があったか。


 簡単に言えば、ソルド殿下による切り崩し工作が成功し、政争において大勢が決した。

 ソルド殿下が王手をかければ、中立派が王党派へ合流して全てが終わるという最終段階。


 そこで未だにアイシア王女殿下がいるという地方分派の代表である北伯であるランドル辺境伯がなにやらきな臭い動きをしているらしい。


 なんでも既にソルド殿下が掌握しているという、リンブル王国の密偵集団である『王の剣』からよこされた情報によると、厳しい交通規制が起こり、各種物価が上がり始めているという話だった。


 俺達『辺境サンゴ』に言い渡された久方ぶりの任務。

 それはソルド殿下から手渡された親書をランドル辺境伯へと手渡し、彼の投降を促すことだ。


 ただそれだけが目的だというのなら、俺達をわざわざよこす必要はない。


 ってことは殿下は何かしら、荒事の気配を感じているわけだな。

 もしかしたら既に何か、掴んでいるのかもしれないけどな。

 相変わらずあの人は、そういうところに異常なほどに目鼻が利く。



 俺達は普通の冒険者を装い、偽装したギルドカードを使い無事ランドル辺境伯領へやってることに成功した(実質的な最高権力者が味方についていれば、もうなんでもありだ。自由な気風と言いながらも、冒険者ギルドも権力には逆らえないのである)。


 やって来た、のはいいんだが……。




「隊長ぅ~……」

「みなまで言うな、俺だってわかってるさ」


 領内に入ってみれば、既にそこら中に鉄槍を持った大量の兵士達がいる。


 明らかに臨戦態勢、というかいつ戦争がおっぱじまってもおかしくないくらいにみなが殺気立っている。


 道行く人達の顔も不安そうで、既に家財道具を持ち出してどこかへ逃げだそうとしている商人の姿もあった。


 これは――一波乱、ありそうだな……。


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