結果
主の力は尋常ではない。
比較対象がないからわからないが、全員が一丸になっている俺達全員の膂力と渡り合えるとような魔物となると、ちょっと想像がつかない。
だがなんにせよ、ここで負けるわけにはいかないっ!
『辺境サンゴ』に敗北の二文字はないのだ!
「右だあああああっ!」
「「「せええええええええいっ!」」」
「次は左っ!」
「「「どっせええええええいっ!」」」
最初は拮抗していた俺たちと主との力比べ。
だが俺達はチームであちらは単体だ。
その差が、如実に出始める。
俺達は集団なので、一人が疲れてきたら休憩をすればいい。
その代わりにアンデッドを入れておけば、引っ張る力の減少も最小限で済む。
対し相手の主の方は一匹っきり。
多少疲れてこようが、引っ張り続けなければ俺達に釣られて終わってしまう。
手にかかる力が、徐々に弱くなってくる。
「よしっ、もう一息だ!」
休憩していたメンバーたちを再度アンデッド達と入れ替え、総力を挙げて釣り竿を引っ張る。
グググッと最後に急に力が強まってくる。
そして川に映る影の色が、どんどんと濃くなってきた。
最後のあがきだと看破した俺は魔闘気を発動。
釣りに大人げなく本気を出し、こちらも最後に全力を振り絞る。
ざっぱああああああんっ!
勢いよく飛び上がる魚影、スコールかと見紛うほどに俺達の全身に降り注ぐ水。
ようやく主がその姿を現した。
再度潜水する川の主。
けれど既に、最初の頃あった元気はなくなっていた。
それから格闘すること十数分。
俺たちはようやく、主を釣ることに成功したのだった――。
「お……おっきいですねぇ……」
エンヴィーが、釣り上げられた主を見上げている。
主のサイズは、俺が想像しているよりもずっと大きかった。
横幅だけで、俺の背丈よりも大分高い。
優に二メートルは超えているだろう。
縦の幅は、どれくらいだろうか。
パッと見ただけで、軽く二十メートルは超えていると思う。
よくこんなのが川にいたな……何かの間違いで外に出たりしてたら、大変なことになってた気がする。
というかこんな魔物が川にいて人間に被害が一人も出てないのが奇跡だと思う。
でも人に被害がなかったり、魚が壊滅的にいなくなったりしてないことを考えると……よほど燃費のいい身体をしていたのかもしれないな。
とりあえず臓器だけ先に取っておいて、後で研究材料にさせてもらおう。
「よし、とりあえず最後にバーベキューだけして、帰るぞっ!」
とりあえず適当にブロックを切り分けて、こいつの魚肉を使って主釣り記念のバーベキューをすることにした。
バーベキューは盛況のうちに終わった。
予想外だったのは、せっかく釣り上げた川の主の肉があまり美味しくはなかったところだな。
多分身体がデカすぎて、うまみ成分みたいなのが全身に散っちゃったんだろうな。
大味すぎて、調味料でごまかさないとあまりにもぼんやりとしていた。
結局最後は、俺が出したドラゴン肉を振る舞うことになってしまったが、まあ在庫処理ができたと思おうじゃないか。
バーベキューが終わり、皆で川に入って水浴びをして汗を流し。
さて帰ろうかという段階で、サクラが俺のところへやってきた。
「アルノード、ちょっと小耳に入れておきたいことが」
「どうかしたか?」
その真剣そうな顔に、遊びのだらだらモードから気持ちを切り替えて、仕事のスイッチを入れる。
けれど俺の横顔を見てポッと顔を赤くするサクラを見ると、せっかく切り替えかけていた仕事モードがとけてしまいそうになる。
自分でも自覚があったのか、ううんと喉を鳴らすサクラは、気を取り直してから告げた。
「北伯が軍を動かそうとしているようだ。なんでもアイシア殿下と共謀して、何かを画策しているらしい」
ゆったりと過ごす遊びの時間は終わりか。
何もせずぼうっとしているのにもいい加減飽きてきたところだ。
俺たち『辺境サンゴ』は、本来の仕事に戻るとしよう。
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