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答え

外へ出てみると、夕暮れが世界を征服しつつあった。

 つい先ほどまで青く隅々まで澄んでいた空には雲がポツポツと浮かび、オレンジ色に変わり、西日が空から俺たちのことを照らしてくれている。


「それでな、それでその時にオウカが……」

「ほぉ、じゃあ幼い頃はオウカの方がずっとお転婆だったんだな」

「ああ、オウカがちゃんと落ち着いているようになったのは、実はここ数年のことで……あ、アルノード、他の人に言ってはダメだぞ」

「言わないさ」


 ぶらぶらと歩きながらするのは、昔の話。


 サクラがどんな風に育ってきていて、俺の歴史はどんな風に紡がれているのか。


 三つ子の魂百までという言葉を、以前どこかで聞いたことがある。

 小さい頃の性分っていうのは、大人になってもそれほど変わらないという意味だ。


 例えばサクラは、小さな頃からずっと真面目だったらしい。

 対して俺の方はどうかというと、昔からどちらかと言えば協調性重視で、そんなに強く自己主張をしてこなかった。


 こうやって思い出してみると、なるほど俺という人間は昔から変わってないのだなぁと思う。


 森の中を歩いてたが、視界が悪くなってきたので川沿いの方に出る。

 夜のとばりが降りそうになっているせいで、空にいる星たちが輝きを取り戻し始めていた。

 川沿いの道を、時折靴の中に入る細かい砂利を煩わしく思いながら、二人で並んで歩いていく。


 最初に会った時と比べると、ずいぶん距離も近くなった。

 元々は令嬢だった彼女が、今では『辺境サンゴ』のメンバーだ。

 俺と出会った一番境遇が変わった人間は、実はサクラなんじゃないだろうか。


「そういえば、エルルたちともずいぶん打ち解けられるようになっていたよな」


 騎士としての生活で身につけた高いコミュニケーション能力のおかげか、彼女はそれほど時間をかけずに『辺境サンゴ』のメンバーたちと仲良くなっていた。


 最初なんかはエルルとかなり険悪そうで、正直結構不安だったんだが……いい意味で予想外だった。


「一度、思いっきり喧嘩をしたからな」

「え、そうだったの?」

「ああ、今思えば向こうは手加減してくれてたんだとは思うが、二人ともボロボロになった」


 な、何やっとりますのん……。

 思わず素の言葉が飛び出てしまったじゃないか。


 喧嘩をして仲良くなるって、どうやら『辺境サンゴ』の女性陣はかなり男勝りなところがあるようだ。

 元々男所帯の軍隊上がりだから、そういう気風が残っているのかもしれないな。


「それで仲良くなったってことか? 拳のぶつけ合い的な」

「というより、お互いを認め合ったってところか。もちろん二人とも、相手のことは嫌いだぞ。だが好悪とその人物に対する評価はまた別物だろう? あいつの作戦遂行能力や周囲との調整能力は買っているつもりだ」

「なるほどな……」


 俺が見ていないところでの隊員達のやり取りが、気になってくるところだ。

 今は仲がいいからいいが、後で険悪になったりしたら面倒だしなあ。


 仲が悪い奴とは配属先や暮らす場所を変えられるよう、ある程度柔軟に対応した方がいいだろうか。

 仲が良い奴と離ればなれってやつも、変えられた方がやる気が出るかもしれない。


 俺はメンバーの皆を信じてるし、仲が良いメンバーと同じ班ってだけで仕事をなあなあにするようなやつはいないと思っている。


「まあなんにせよ、なじめて良かったよな。騎士団を抜けさせてすぐに出戻りみたいなことになると、さすがにアルスノヴァ侯爵へ面目が立たないし」

「そんなことを気にする必要はない。父上も私がこの『辺境サンゴ』に来た時点で、ある程度覚悟を決めているはずだからな。あとはどうなろうとそこまで問題にはならないだろう」


 覚悟、というのはいったいなんのことを差しているのか。

 なんとなく想像がついてしまった。


 多分サクラが俺とそういう……ねんごろな関係になる覚悟って意味だよな。

 つ、次会う時に侯爵と、どんな顔をして会えばいいんだろうか……。

 ドヤ顔をしながら魔力を叩きつけた以前のことが、もうずいぶんと昔のことのようだ。


 少し聞きにくいことではあるけれど、今後のことを考えれば必要なことなので、勇気を出して聞いてみることにした。


「それで、その……サクラは俺のこと、好きってことでいいのか?」

「ああ、そうだぞ。というか自分でも、結構露骨だと思うくらいにアピールしてたんだけどな……」

「すまん、そっちの方にはちょっと疎くて」

「ちょっとじゃないような気もするが……」


 否定したいが、事実俺はみんなから寄せられている好意には気付かなかったので黙っておく。

 そしてどうやらサクラの気持ちも他のメンバー達同様、あの場の熱にあてられて……という感じではないらしい。


「今すぐ答えは出さなくていい。ちゃんと私のことを愛してくれるのなら、一番でなくとも構わない」


 女の子にここまで言わせておいていかなければ、正直男じゃないと思う。

 だってこんなの、都合のいい女でもいい的な意味合いじゃないか?


 ……いや、サクラの場合は貴族家の貞操観念があるから、また話は違うのか?

 わからない。わからないが……ハーレムを作るのなら、これも乗り越えなくてはいけない壁なんだろう。


 結局そののちに、俺はみんなから話を聞いてみることにした。

 そしてみんな意志を翻すことはなく、俺と一緒にいたいと言ってくれた。


 そこで俺が出した結論は――。


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