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王様とは


「……私が、王」


 次に王様になったのはマリアベルだった。

 俺の番号は六、いつまでたっても当たりを引く気配はない。


「五番が……好きな人を言う」

「えっ!?」


 俺はその驚き声に、ものすごく嫌な予感がした。

 その声の主が……エルルだったからだ。


「私が好きな人は……アルノードさんです!」

「「「……」」」


 みんなが黙り、目配せを始める。

 俺に熱っぽい視線を送っているエルルを見て、何人かが俺を冷ややかな目で見つめていた。

 ……なんだよ、そんなに見ないでくれ。

 俺別に、なんにも悪いこととかしてないぞ。


 エルルが行った公然告白も同然の所業によって、部屋の空気が一気に冷たくなった。

 合間に話すこともないまま、みなが無言のまま棒を箱に戻す様子は、なんだかちょっと怖い。


「「「王様だーれだっ!」」」



 俺の番号は三、これ実は当たり入ってないんじゃないのか?


「ふふーん、僕が王様だねっ! それじゃあ……七番が三番にキス!」


 おっ、とうとう俺が当事者になったぞ。

 相手はいったい誰だ!?


「わ、私だ……」


 おずおずと手を挙げたのはサクラだった。

 さ、サクラか……一番そういうことに抵抗ありそうな子が選ばれてしまったな。


「そ、それじゃあアルノード、目をつぶってくれ……」

「お、おう……」


 言われるがまま目を閉じる。

 チュッという音がして、次に感じたのは唇の熱さ。


 何をされたのか理解した瞬間に、思い切り目を見開く。

 そこには目をつぶって顔を真っ赤にしている、サクラの照れ顔があった。


 さっきと違って……額にじゃなくて、唇でのキスだった。

 というかこれ……普通にキスじゃん。

 いかん、自分でも何言ってるのかよくわからなくなってきた。


「もうここで言う。アルノード、私はお前が好きだ」

「――ちょっ!?」


 エルルが驚いたような顔をして、飛び上がる。

 そして目を大きくして、サクラのことを見つめていた。


 ひゅーっと周りからは囃し立てる声が聞こえてきた。

 なんか様子が変だぞと思いよく見てみると、周りのみんなの顔は真っ赤だった。


 これは間違いなく……ベロベロになってるな。

 というか俺も多分酔ってるし。


 さてはライライ……俺たちに相当度数の高いやつを飲ませたな?


「好きだ……アルノォードォー……」


 サクラはそのまま俺の隣に座ると、全身を俺に預けるようにしなだれかかってくる。

 おいサクラ、悪いことは言わないからこれ以上は何かをしない方がいいぞ。

 明日になってから、後悔することになるぞ、間違いなく。


「私はなぁ、お前に助けられてからずっとぉ……」


 そこから先はむにゃむにゃ言っていて聞こえなかったが、サクラが俺を見つけてくる視線はいやに色っぽく、熱を帯びていた。

 その潤んだ瞳と薔薇色の頬に、思わずウッと喉の奥の方から声が出る。


 人間、酔った時には本性が出るという。

 だとするとサクラは、本当に俺のことが……?


「ほらっ、次だ次っ」


 サクラの催促に止まっていた時間が動き出し、みなが棒を箱へ入れ直す。

 中身を混ぜて王様の場所を変えてから、再度引く。


 次に王様になったのは、セリアだった。


「私はぁ……アルノードさんが好きです!」


 そしてセリアの命令は、もう命令でもなんでもなかった。

 それは完全に告白だった。


 もう番号とか、まったく関係なくなってる。


 それを見てひゅーひゅーと再度囃し立てる女性陣。

 よく見ればその輪の中に、サクラの姿もあった。


 いや、溶け込めてるのはすごくいいことだと思うが……それはいったい、どういう状態だ?

 サクラはどんな心境で、この状況を楽しんでいるんだろう。

 女の子っていうのは、相も変わらずただひたすらに複雑だ。


「セリア、お前この場の雰囲気に飲まれてるぞ絶対」

「そ、そんなことないですよぉ。私は本気で、アルノードさんのこと愛してるんです! サクラよりエルルより、私の方があなたのこと、大好きです!」


 前髪の間からチラリと見えるその赤い瞳は、メラメラと燃える炎のようだった。

 セリアの表情を見ていると、とても冗談とは思えない。

 となるとセリアまで俺のことが好きということになるが……。


「私も好きですっ!」

「……私も」


 そしてそこに、エンヴィーとマリアベルまで参加してきた。 

 もう誰が俺のことを好きなのか、矢印が多すぎて判別できない。


 とりあえずライライを除くほとんどの女の子たちが、俺のことを好き好きと連呼し始め、もうゲームどころではなくなってしまう。


 俺は……どうしたらいいんだ。

 酒の勢いもあったとはいえ、こんなに沢山の人に好意を打ち明けられて……。


 そう簡単に答えは出せそうにないが……俺なりに答えは出さなくちゃいけないよな。

 これからも一緒にやっていくことになる彼女たちに、不誠実な答えは返せないから。



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