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王様ゲーム 2


「「「王様だーれだっ!」」」


 次に引いたのは――三番だった。

 まだ王様が引けないか、確率的にはいい加減きたっていいはずなんだけどな。


「やたっ、私が王様!」


 次に王様になったのはエンヴィーだった。

 彼女の頬は初めて人に言うことを聞かせることの喜びからか、バラ色に紅潮している。


「えーっとそれじゃあ……五番が七番の頬をビンタ!」

「ほい来たっ、私が五番ネ」

「おーっほっほっほ、私が七番ですわぁ!」


 五番がライライ、そして七番がマフィンだ。

 ライライは既に酔っ払い、出力がバカになり始めている。

 これは少しマズいぞ……。


 マフィンも扇で口許を隠してはいるが、若干震えている。

 多分扇の下は、引きつっているだろう。

 目元もピキピキッと動いている。


「ほぉれマフィン、気張るネ!」

「ここここの人、本気ですわああああああああああっ!!」


 ライライは跳躍し、グリフォンのようにしなやかに着地。

 そして思いきり身体を捻ってから、鞭のように腕を振る。


 バチイイイイインッ!


 物凄い音が鳴り、マフィンの首と胴体が離れてしまいそうなほど強い衝撃が走る。

 首が持っていかれそうになっていたマフィンは、ボールのように吹っ飛んでいく。


「ですわあああああああああああああああっ!!」


 そしてですわという言葉だけ残して、別荘を貫通してどこかへ飛んでいってしまった。

 あとにはマフィンの形になった、妙にシルエットが豪華な穴だけが残った。


 ……後でちゃんと、請求書もらおう。


「じゃあいくぞ、せーのっ!」

「ちょ、ちょっと待てアルノード! あの子を拾ってきた方がいいんじゃないか?」

「いや、マフィンならなんとかなる。だから俺は、このまま王様ゲームを続行する」

「なんでそんな変なところで頑ななんだ、お前はっ……!」


 まだそれほど親しくないメンバーが多いからか、どこか肩身が狭そうだったサクラも、今の一撃を見て色々と吹っ切れたらしい。

 心配そうな顔をしてはいるが、グッと拳を握っているその姿はどこか楽しそうだ。


「マフィンはあれで結構硬いからな。別荘をぶち抜くくらいの勢いなら、大した怪我もしてないはずだ」

「が、頑丈なんだな彼女は。私よりよっぽどお嬢様みたいなのに……」

「あれでめっちゃ平民だからな。マフィンは最近金に余裕ができて家庭菜園始めたらしいぞ。彼女の借りた土地へ行くと、あの格好そのままで農作業をしている姿が拝める」

「ぷ……ぷふっ!」


 笑い出すサクラを見て、エンヴィーたちも釣られて笑った。


 なんとなくほっこりしてくる。

 一個空いているスペースとその奥にあるお嬢様型の穴がなければ、完璧な絵面だっただろう。




 いい感じに場が和んだところで四回目といこう。


「「「王様だーれだっ!」」」


 俺の番号は――七だ。


 ちくしょう、もうどこかで王様になれないと思っている自分がいる。

 だって俺の番号はなんだろうって思っちゃってるもんな。

 負け犬思考になってるぞ、いかんいかん。


「おっ、私が王様か」


 次に王様になったのは、サクラだった。

 これはちょうどいいタイミングだ。

 彼女はいったい何を望むんだろう。


 まだあまり仲良くない分、やりすぎのラインの見極めが難しい。

 サクラはこういう時に、突っ込むタイプなのだろうか。


「それなら……十番が一番とキス!」


 い……いったあああああっ!

 サクラ、いきなりぶっ込んでいったあああっ!

 ちょっと飛ばしすぎじゃないか!?


「私が十番!」

「……一番」


 そして選ばれたのは、十の棒を持つエンヴィーと、一の棒を持つマリアベルだった。

 二人は互いに切磋できるライバルであり、仲間でもある。


 そんな二人がこうなってしまうとは……なんという運命のイタズラだ。


 ……いかん、雰囲気に飲まれているせいか。

 なんだか俺のテンションが上がっていく気がするぞ。


「……目、閉じて」

「おけ」


 マリアベルが目を閉じる。

 エンヴィーが額にキスをする。

 そして何事もなかったかのような顔をして、マリアベルが目を開く。


「終わり」

「まあ、これくらいなら別に平気かな」


 そういっているエンヴィーたちの耳が少しだけ赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。


 同性とキスか……俺がシュウとするってなったら断固拒否するが、彼女たちはそんなに抵抗ないみたいだな。


 女の子同士って、そういうものなんだろうか。

 などという哲学的な考えを弄んでいると。


「おーっほっほっほ! マフィン、只今戻りましたわ~!」


 頭に葉っぱをつけている雑草お嬢様が帰還してきた。

 よし、フルメンバーが揃ったし、さっさとゲームを再開するぞ!



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