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再度


「……」

「……(もじもじ)」


 別荘に帰ってきてからというもの、俺は妙に気まずくてエルルと目を合わせていなかった。


 彼女の方はもっと露骨で、俺の方を見てからあからさまに顔を赤くして俯いて……というのをもう何度も繰り返している。


 こんなのもう、何かあったと白状するようなものだ。

 みんなは優しさから何も言わずにいてくれているが……恐らく何かには勘付いているだろう。


「アルノードは今日これからの予定とかあるのか?」

「……いや、特にないな」


 サクラは鈍感なのか押しが強いのか、なんとなく生まれている空気の変化にはとりあわずに話しかけてきてくれる。

 気まずいままなのもあれなので、ありがたい。


「それなら私と適当に山登りでもしないか?」

「ああ、いいz――」

「ちょっとマンタ!」


 割り込みエンヴィーが、ふよふよと両手を動かしている。

 どうやらマンタの真似をしているらしい。


 待ったとマンタをかけたのか……百点満点中、九十五点だな。


「私も隊長と遊びたいです!」

「……私も」

「私もですぅ」

「それなら最後は私と酒でも飲もうカ?」


 マリアベル、セリア、ライライを皮切りに、ハイハイとみんながすごい勢いで手を上げ始める。

 そこには何故か、昼間で一緒に遊んでいたはずのエルルの姿もあった。


「ちょっとエルル、あんたが再度挙手するのはおかしいでしょ!」

「二度遊んじゃいけない、というルールもないでしょ」

「いいからここは私たちに譲りなさい!」

「大人げない、エルル」

「みんなの思いやりを無碍にするなんてぇ……」

「うぐっ、そ、それを言われると……」


 だが何やらごしょごしょしていたあと、気付けばエルルは引き下がっていた。


 人数は合わせて九人ほど。

 けれど俺の身体は九個もないし、半日で全員と遊びに行くだけの時間的な余裕もない。


「アルノードさん、どうにかしてタイムリープして全員と遊んで下さいよぉ」

「おま――無茶言うなって。空間魔法と時間魔法は、時空って言い方で一括りにされてるけど、完全な別物だからな」


 俺は『収納袋』を作るのに必要な空間魔法であれば問題なく作ることができるが、時間魔法についてはまったく扱えない。


 『収納袋』につけられる『遅延』とかの能力も、厳密には空間魔法だからできることなんだよな。


「よおしっ、それならうちらで揉め事が起こった時に、決める方法は一つだけ」

「コインの裏表で決めるのカ?」

「そんなまどろっこしいことするわけないでしょ! バトルよバトル、勝った奴だけがアルノードさんを手に入れることができる」


 俺は景品なんだろうか……。

 いや、別にみんなと遊びたい遊びたいって言われるのは素直に嬉しくはあるんだが……人気者はつらい、ってことなのかもしれない。


「えぇ~、またですかぁ」

「たまには別の方法でも……」


 もし戦いで決着をつければ、エンヴィーたちが勝つのは疑いようがない。

 なので他の子たちは、なんとかして別の方法に持ち込めないかと考えているようだった。


 たしかに、エンヴィーは何をするのも戦いで決めがちだよな。

 それなら……そうだ、あれがあるじゃないか。


 俺は収納袋から、木材を切り出し、まずはシュッシュッと樹皮を削ぐことにした。


 いったい何をして遊ぶ相手を決めるのか。

 喧々囂々のやり取りをしているみんなの議論が白熱しているうちに、作業を進めていくことにした。


 木材を上から眺めて、大体どんな風に等分すればいいのかあたりをつけるために、炭で軽く目印をつけていく。


「だったらここは全員で遊ぶという手も……」

「否! 闘争こそが人間の真価! 戦って勝ち取った物だからこそ、大切にしようと思うものよ!」

「そんなむちゃくちゃな……」


 とりあえずオリハルコンソードでサクサクと斬っていく。

 座ったままで、音も立てずに簡単に裁断できる。

 やっぱり魔力含有金属というのは偉大だな。


 合わせて十本の角材ができた。

 これだとまだまだサイズがでかいな……。

 片手で持てるように半分、もう半分と刻んでいく。


 これくらいでいいかなと思うタイミングで、まずは角を落とす。

 次に剣を辺に沿って動かしていき、軽く丸みを帯びさせていく。

 最後にやすりで削ってしまえば完成だ。


 俺の目の前には、十本の丸く細い円柱が誕生していた。

 我ながら、なかなか良くできたと思う。


「……ん、もう話し合いは終わったのか?」


 作業に満足して、腕を組みながらうんうん頷いていると、気付けば喧噪はやんでいた。

 見ればみんなが、俺の作業の方に意識を向けていたらしい。


「隊長、それ何ネ?」

「ふふふ……つまりこういうことだ」


 俺は朱色のインクのついた絵筆を取り出し、棒のうちの一本の端を赤く塗る。


「王様ゲームで勝負と行こう!」


 俺が誰を選んでも不満が残るだろうから、ここはゲームか何かで決めておきたい。


 そしてゲームと言われて俺が思い浮かべるのは、つい先日やったばかりの王様ゲームだった。


「隊長……王様ゲームに、勝ち負けはありませんよ?」

「……たしかに。それなら一番多く王様を引いた順にするか」


 ちょっと我に返ったが、すぐに方針転換。

 くじ引きで決めるついでに、王様ゲームで遊んでしまうことにしよう。


 休暇なんか、楽しんだもん勝ちだ。

 なんでも楽しくやった方がいいだろう。



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