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紅潮


 川縁の散歩はいい。

 川の流れが激しいからか、結構な頻度で水が飛び散っている。

 そのおかげで天然の打ち水のようになっていて、周りと比べると少しだけ涼しいのだ。


「どうせなら足だけ浸かりません?」

「いいぞ、革靴とか履いてるわけじゃないし」

「もう、本当にアルノードさんはいっつも一言多いですね」

「じゃあなんて言えばいいんだ?」

「うん、俺もエルルと一緒に川で遊びたいな……ですかね」


 そんな恥ずかしいことを言わなくちゃいけないのか!?


 ……いやでも、よく考えてみれば。

 女の子ってわりと、そういうストレートなのが好きだったりするよな。


 だとしたら俺が今までモテてこなかった原因は、そのあたりの配慮の足りなさにあった……?


「俺もエルルと一緒に川遊びがしたいぞ」

「及第点です、それじゃあ一緒に行きましょう」


 釣り道具は『収納袋』に入れているので、手が塞がったりはしていない。

 だからなのか、エルルは空いている俺の右手をキュッと握ってきた。


 握り返すか迷った結果……そのまま握られるがまま歩き出す。

 意気地のない俺を笑ってくれ。



 ほとりで水をパシャパシャやりながら、けれど昨日のように激しく水しぶきを上げたりはせず。

 水の冷たさを楽しみながら、笑顔のエルルを眺めて時間を過ごす。


 会話はそんなに上手い方じゃないから、俺はもっぱら聞き役だ。


 それに今日はエルルを楽しませたい気分だからな。

 聞くより話している側の方が、大抵は楽しいもんだ。


「で、ですね、その時セリアが……」


 俺らの共通の話題は戦いかクランメンバーのことばかり。

 こんなところに来てまで血生臭いことを話す趣味もないので、話題は自然メンバーのことになる。


 俺は昨日、セリアの部屋でみんなが何をしていたのかを聞かせてもらっていた。

 どうやら彼女たちは彼女たちで、女子会をして楽しんでいたらしい。


 セリアは割と、マスコット的な扱いを受けている。

 一緒に肩を並べて戦ったりすることはないし、身長もちっちゃいし、目も真っ赤でどこかお人形さんみたいだからな。


 見た目に気を遣えばもっと綺麗になれるだろうに、本当にもったいないことである。


 うんうんと相槌を打ちながら、話を聞く。

 長いのでずっと集中なんてできるはずもなく。


 ところどころ聞き逃している箇所はあるけれど、そんなことはおくびにも出さずにわかっているぞという顔で頷きを返す。


 人とのコミュニケーションって、割と嘘も方便なところがあると思う。


 気付けば俺たちは川から上がっていて。

 比較的近い場所にある大きな石の上に腰掛けて、向かい合って話をしていた。


 エルルの顔が、かなり近いところにある。

 こんなこと、今までも何度もあったはずだ。


 なんなら抱き上げたりおぶったりしたことだってある。

 だが今の俺はなぜか、緊張していた。


 そろそろをいい人を見つけなければ、という思いが頭から離れないせいかもしれない。


 婚活の二文字が、目の前にいるエルルが異性なのだということをどうしようもなく意識させる。


 俺がもし結婚するとしたら、間違いなく仕事に理解のある人ではなくてはいけないだろう。


 普通の商家の娘なんかと結婚しても、価値観の違いはなかなかに埋めがたいと思う。


 とすると、未婚で若い女性の沢山いる『辺境サンゴ』の女性陣は、俺からすると有力な結婚相手の候補になってくるはずだ。


 メンバーのみんなも俺のこと、割と慕ってくれている……とは、思う。

 さすがに愛慕とまではいかないと思うけれど。


 エルルは俺のこと、どう思っているんだろうか。

 彼女も他のほとんどのメンバーと同じく、美人でスタイルもいいのに、何故だかそういう浮いた話をまったく聞かない。


 気になったら突き詰めるのが俺の性分だ。

 なので端的に聞いてみることにした。


「なあ、エルルって俺のこと……どう思ってる?」

「え……」


 エルルは合わせていた視線をふいと逸らし、顔を俯かせる。

 そして両手を重ね合わせ、にぎにぎしてから、こっちへ向き直した。


 彼女の耳は赤く染まっていて。

 その瞳は、少しだけ潤んでいるように見える。


 いきなりの変化に戸惑っている俺に余裕が生まれるよりも早く、エルルは告げた。


「大好きです。私アルノードさんのこと、ホントのホントに大好きです」



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