ゲーム
川辺で水をかけ合い、最終的に水魔法と気力によって強化した腕力による力攻めとの戦いが終わった頃には、夕陽が沈み始めていた。
そして一日目の夜がやってくる。
「と、いうわけで王様ゲームをしようと思います」
「何がというわけなのかはまったくわからないな。それに……王様ゲーム?」
王になって領地を発展させるようなタイプのボードゲームか何かかと思ったら、まったく違った。
まず最初にくじを引いて王様を決める。
その際、王様ではない外れクジにはそれぞれ番号が振られている。
王になった人間は、みんなに好きな命令をなんでも一つできる。
その代わり、王は直接人を指名できないという制限がある。
そしてその際に、割り振った数字を使う。
『○○番の人間が、今から腕立て二千回!』
みたいな形で命令を下すというわけだ。
そこがランダム要素になってくるわけだな。
でもこれ、どのくらいの命令をしてもいいんだろうか。
例えば誰かに酒を樽で飲ませてダウンさせれば、その分俺が次も王になる確率は上がるよな。
……遊ぶ時って、そういうことは考えなくていいのか。
別に勝つことが目的なわけでもなし、こういう雰囲気を楽しむことが一番大切だろう。
参加者の中に、エンヴィーたちいつものメンバーはいない。
セリアが、こういう誰かと遊ぶレクリエーションが極めて苦手なので、彼女の部屋でみんなでわちゃわちゃしているはずだ。
あいつはある程度仲良くなった人とじゃないと、元部下だろうが同僚だろうがまともに話せないからな……。
今回の面子は俺、ミミィ、リリィ、アルスラ、ギネヴィアの五人だ。
屋敷の中に住んでいる面子の中では、割と接している頻度は高い方の子たちである。
「ミミィが女王様!」
「リリィも女王様!」
「「クイーンが二人いたっていいよね!」」
ミミィとリリィは、双子の姉妹。
ミミィは髪を右に下ろしていて、リリィは左に下ろしている。
誰かにイタズラをするのが好きな奴らなので、時たまミミィとリリィが逆になっていたりする。
それを当ててやると、二人ともなぜかすごく喜ぶんだよな。
ちなみに戦うときは、まるであらゆる感覚を共有しているかのようにぴったりとした動きをみせる。
後ろに目がついてないとできないような動きを平気ですることもあるから、多分なんらかの特殊能力があるんだと思う。
双子の先天的な感覚共有は、たしか前例があったはずだ。
人数が五人だから、王様になる確率も五分の一。
てか、これって結構不敬なゲームだな。
政治の悪口とか言ってるわけでもないし、別に処罰とかはされたりしないだろうけど。
「……」
アルスラはマリアベルより更に輪をかけて話をしない女の子だ。
というかいつもまったく喋らないので、どんな声をしているのかは俺も知らない。
布帯で目を覆っていて、髪は地面につくほど
長い。
ちなみに意思疎通の際は、基本的には筆談だ。
今口を開かずとも精神に直接作用する『通信』の魔道具を作成中だから、もしかすると今後彼女がどんな人間なのかが明らかになることがある……かもしれない。
「さっさとやろうよ、私も話にしか聞いたことないから、ちょっと楽しみなんだよねぇ」
ギネヴィアは褐色の姉御肌で、俺よりも少しだけ年が上だ。
この問題児たちと行動を共にしているのは、彼女がかつてリリィたちの隊の小隊長だったからである。
面倒をかけてすまないな。
今度一緒に酒でも飲もう、話なら聞くから。
「お、約束だよ? 言質取ったから」
何やら楽しそうなギネヴィアに頷いていると、どうやらくじの作成が終わったようだ。
箱の中に、五本の木の棒が入っている。
「赤いのが出たら」
「王様だからね!」
たしかに王様の服って、基本赤なイメージあるよな。
以前は紫染めの方が主流だったが、なんとかって花が流通してから赤染が主流になった、みたいな話を聞いたことがある。
作為的にならないようにガシャガシャと箱を振ってやると、ミミィとリリィが頬に手を当ててショックを受けていた。
どうやらこいつらは、スタートからイカサマをして王様を取りにいくつもりだったらしい。
残念だったな。
王になるのは、この俺だ。
……どうしよう、何故か脳内でソルド殿下ボイスで再現されたぞ。
殿下の幻想を振り切り、適当な棒を手に取る。
いっせーのーせで棒を抜き取ってみれば、そこにあったのは……ミミズののたくるような文字で書かれた二だった。
「よし、私が王様になったぞ。えっと、それじゃあ――」
王様になったギネヴィアが早速命令を下す――。
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