水遊び
まず最初に遊ぶのをどこにしようか。
悩んだ結果、やっぱりまず最初は川遊びだろうということになった。
幸い、今日はピーカン照りなのでお日様の下遊ぶには絶好の日和だ。
川へ辿り着き、とりあえずズボンの裾を上げて足を入れてみる。
「かなり冷たいな。水風呂みたいだ」
「ひゃっこい! ひゃっこいです、アルノードさん」
水の透明度はかなり高く、水深はそれほど深くない。
俺の膝下くらいまでの深さなので、泳ぐのは無理そうだ。
けどこれでも十分気持ちいい。
服が濡れないように気を付け……わっぷ!
「ちょっ、誰だ俺に水かけたやつは!」
「私です」
「私もです」
「左に同じ」
水の冷たさに浸っていると、いきなり背中から水をかけられる。
振り返ってみれば、そこにはエンヴィー・マリアベル・エルルの三人娘の姿があった。
彼女たちは手をきゅっとすぼめており、笑っていた。
どうやら手の中に入れている水を、両手の緩急でこちらに放ってきたようだ。
今の俺は、長ズボンに半袖という大分ラフめな格好をしている。
まあ着替えればいいし……濡れても構わんだろう。
いや、むしろ濡らしてしまえ。
「俺も負けんぞっ! ――なんでだ!?」
見よう見まねでキュッと手の中に水を入れ、発射口を作る。
飛ばすために勢いよく手に力を入れると……なぜか水が、俺の顔に向かって飛んできた。
解せぬ……いったい何がいけなかったのだろう。
プークスクスと笑う声。
見れば遠くから、セリアがこちらに指を向けて、惨めな俺のことを嘲笑していた。
ええい、細かい調整をしていては勝てない。
今必要なのはパワーだ。
判断は一瞬。
俺は組んでいた手を離し、そのまま両手を川の水へ漬け……そのまま思い切り掬い上げた。
「きゃっ!」
「冷たっ!」
手で押し出せないのなら、無理矢理水をぶっかけてしまえばいいのだ。
手のひらのサイズがそこそこ大きいおかげで、結構な量の水が飛んでいった。
水は無事にエンヴィーと、そのすぐ隣にいたマリアベルへとかかってくれた。
冷たかろう冷たかろう。
ふっふっふと笑いながら、エンヴィーたちの方を見る。
彼女たちの格好も、俺と変わらずかなりラフだった。
上に白いシャツを着て、下には丈の短いホットパンツ。
肌色成分が高めで、正直なところ若干目のやり場に困る。
そして俺は、自分がしでかした失策に気付いた。
水で濡らしてしまったせいで――シャツが透けてしまっているのだ。
川の水が肌にぴったりと密着するせいで、その下に着ているはずの下着が……と思ったのだが、様子がおかしい。
二人ともまったく恥ずかしそうな素振りをしていない。
有事の時はともかくとして、そこまで恥じらいがない女の子たちではなかったと思うんだが……。
エンヴィーたちは俺が首を傾げているのに構わず……そのまま俺への攻撃を続けるだとっ!?
焦っている俺に対し、彼女たちは不敵に笑う。
「甘いですねアルノードさん、事前対策は完璧です!」
「とうっ!」
向こうもすぐに細かく水を出すのをやめ、俺のように腕力を使ってバッシャンバッシャン水をかけてくる。
いくら水に足を取られて動きが鈍っているとはいえ、本来ならばかわすことのできる攻撃だ。
けれど動転していた俺は、その水攻撃をもろに食らってしまう。
俺の全身が更に濡れる瞬間、ちらと視界に入った彼女たちの様子から俺は全てを悟った。
(なるほど……事前に水着を着込んでいたわけだな。水着なら見られても恥ずかしくない、というわけか)
俺からすれば水着も下着も肌色成分それほど変わらないと思うんだが、彼女たちにとってはそうではないらしい。
ちなみにエンヴィーの水着は黒で、マリアベルの色は赤。
どちらもビキニタイプだった。
……マリアベルの方が選ぶ水着は派手なんだな。
こういうところも個性があって面白い。
「お前らも待ちきれなかったんだな。遠出する時とか、前日から楽しみで寝付けないタイプだろ」
「もちろん。だからさっきは馬車の中で爆睡してました」
「いびき立ててたのはエンヴィーだったのか……」
シャツが身体にひっついて気持ち悪いので、一旦川を上がり服を脱ぐ。
下のズボンを脱ぐ瞬間、黄色い声が上がった。
けれど彼女たちも、すぐに気付く。
俺も楽しみで……既に下に水着を着込んでいたことに。
俺が脱いだのに合わせて、皆も服を脱ぎだした。
エルルは……白か。
肌の色も白いし、太陽光を全部反射している感じがして、すごくまぶしい。
そしてセリアは……少し離れた木陰で、分厚いローブを着たまま。
それ、絶対暑いだろ……。
ライライは……遠くで他の隊員たちと酒盛りをしている。
酒を飲んだら川に入らないよう、ルールを決めておくか。
酔っ払ってたら、マジで溺れかねんし。
今回の旅には、サクラも同行している。
けど見たところ……姿はないな。
一緒に来たから、近くにはいるはずなんだが。
おっと、よそ見をしている場合じゃないな。
俺は軽く身体強化をして、先ほどより大量の水を飛ばす。
「ちょっとアルノードさん、気力を使うのはズルいですよ!」
「やられたら……やり返す!」
「遊びも全力! エルル、本気でいきます!」
「よしこい、全部受け止めてやる!」
俺たちは魔力と気力を使いながら、全力で水遊びを楽しんだ。
水遊びに全力っていうのは最初はちょっと大人げない気もしたけど……こんくらい馬鹿やってた方が楽しいな!
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