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『怠惰』のアルノード

日間ハイファンタジー5位!

とうとう表紙に載れました!

みなさま、応援ありがとうございます!


 リンブルの貴族に、『七師』のことを知らぬ者はいない。

 ――隣国デザントが侵略戦争により属州を屈服させ、領土を拡張することができているのは、簡単に言えば彼の国の魔法戦闘力が他国より秀でているからだ。

 その急先鋒となるのが、デザント王国最強の七人の魔法使いである『七師』である。


 ある程度の立場に居る騎士であれば、『七師』の基本的な特徴や戦闘スタイルは覚えさせられる。

 もしもの時に彼らを相手に戦うのは、この国の武人たちなのだから。


 『七師』の魔導師のほとんどは、何か一つの魔法に特化している。

 例えば『暴食』のアリステラは山を均し地を割るような土魔法を使い、軍をまるごと壊滅させることができる。

 『色欲』のガーベラは幻術を使い、師団単位の人間に偽りの幻影を見せ同士討ちをさせることができる。

 だがその中に、一人だけ異質な存在がいた。


 それが『怠惰』のアルノード。

 いったいどんな人間でどんな魔法を使うのかもわからぬ、ほとんど謎のヴェールに包まれた人物だ。

 だがリンブルの上層部は、アルノードのことを最も危険視していた。


「我が国は現在、トイトブルク大森林からやってくる凶悪なモンスターたちを抑えきれていない。東部のうちの三割ほどの地域が既に蹂躙され、人の住めない土地に変えられてしまっている」


 リンブルが王位継承で揉めていても内戦にならないのは、魔物の脅威が年々増し続けており、仲違いをしている余裕がないのもその一因だ。


 魔物は年々凶悪になっており、現状王国軍のかなりの部分を大森林の防衛に回してなんとか魔物を押しとどめている。

 だというのに隣国デザントは……兵力の移動をほとんどせずに、大森林からやってくる魔物たちを完全に抑え込んでいる。

 領土の一片たりとて、魔物に踏ませてはいないのだ。


 それをなした人物こそが――『怠惰』のアルノードなのである。


 彼がいったいどんな手を使っているのかは、ほとんど明かされていない。

 わかっているのは、彼が使っている兵が二等臣民と呼ばれる、二線級の者たちであること。

 そしてその規模が六百人前後……大隊一つ程度でしかないことくらいだ。


 デザントと大森林の境界線は長く、とてもではないが魔物との戦線を大隊一つで維持させることはできない。

 アルノードは魔物をまるごと殺し尽くせるような大規模殲滅魔法の使い手というのが、リンブルの人間の予想だった。


「彼だけは刺激してはならないと、私は父上に言い聞かせられていた。自分の力では守り切れぬと、いくつもの街をうち捨ててきた父の言葉は重い」


 もしアルノードの気が変わり倒す魔物のうちの何割かをこちらに回されるだけで、リンブルの経済はもたなくなるだろう。

 だから我々は、彼の者に対しては決して敵対的な態度を取ってはいけないのだ……と。




「それ……本当に俺のことを言ってると思うか?」

「無論だ。その力の一端を見せてもらい、貴殿こそがあのアルノードなのだと言われて、むしろ納得している自分がいる」


 オウカが見つかったことはすぐに知らされ、ガードナーを治める代官がわざわざ来てくれた。

 俺は彼女をおぶったままだったが、どうかそのままというサクラの言葉に頷き、領主館のベッドにそのままオウカを置いてきた。


 そして今は応接室の一つを使い、サクラから説明を受けていたのだ。

 他の誰でもない、俺という人間についてのリンブル王国民の認識について。


 説明を聞き終えた俺は、思わず俯いていた。

 そうでもしなければ、顔が真っ赤になっているのを隠しきれそうになかったからだ。


(な、なんだよ『怠惰』のアルノードって! 俺そんな二つ名、初めて聞いたんだけど!)


 リンブルの人間の俺に対する評価がえげつなすぎる件について。

 そもそも俺に大規模殲滅魔法なんて使えない、そういうのはウルスムスとかアリステラの領分だ。

 だから彼らの考えは、大分見当違いだ。


 俺はどちらかといえば魔道具職人寄りの、理論畑の住民だぞ。

 純粋な戦闘能力なら『七師』の中でも下から数えた方が早いだろうし。


 第三十五辺境大隊のみんなの力を借りて、なんとか魔物の侵攻を食い止めていたっていうのに……何故か国外での俺の評価が高すぎる。


 そもそもリンブルに魔物を振るなんて考えたこともない。

 そんな余裕もなかったし。


「だがアルノード殿は、どうしてリンブルに来ているのだ? オウカを助けてくれたことから考えても、リンブルでのテロ活動とかではないのだろうが」


 サクラはまったく俺を疑っていない様子で尋ねてくる。

 その真っ直ぐな視線が痛い。

 俺のことを色々誤解されていることも含めて、胃が痛くなってきそうだ。


「いや、俺……国外追放食らってさ。デザントにいられなくなったから、とりあえず安全そうなリンブルに来たんだ」

「こくがい……ついほう?」


 まるでその言葉を初めて聞きでもしたかのように、ぽかんとした顔をされる。

 たしかにさっきのリンブルの人たちの認識を聞いてからだと、そんな顔をされるのも納得だ。

 俺は広域殲滅魔法を使う最強魔導師……ということになっているらしいからな。

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