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幽鬼

KJ:0301 アルノードとはどういう人間か。

 彼はまず、とにかく仕事ができる。


 そもそもの話が無理難題だったバルクス防衛を特に犠牲者を出すこともなくできてしまっている時点で明らかだが、アルノードには与えられた命令をしっかりこなすことができるだけの能力がある。


 というかアルノードは、なんでもできる。

 できないことを探す方が難しいくらいだ。


 魔道具を作ればそれ一本で生きてきたシュウよりも高性能な物を作ることができるし。

 戦闘をしても、一対一では誰も勝てる者がいない。


 基本的に何事も、事前に準備をして万全の状態を期して行う。

 つい最近も、アルノードはデザントの『七師』の一人であるウルスムスを、激戦の末に倒している。


 それだけのことができるというのに、アルノードは決して傲らない。

 というか、自己評価が低すぎるきらいがある。


 彼はとにかく優しい。

 自分がどれだけ稀有な存在なのか、本当に理解しているかどうか怪しく感じるほどに優しい。


 アルノードは隊員がどんな出自の者であっても、決して生まれで判断はしなかった。

 更に言うと、彼は人を能力によって判断することもない。


 覚えが悪い者やまともに戦えない人間がいても、簡単に見切ったりすることはほとんどない。

 根気強く丁寧に物を教え、できるようになるまで側に居てくれる。


 そう、アルノードは人に寄り添うことのできる人間だ。

 そしてだからこそ――。


(競争率が高すぎるっ! そりゃみんな好きになっちゃうって!)


 アルノードが、自分が思っていたよりもずっと優しい人間だった。

 普段の凜々しい姿や、バルクスの頃の戦い続けていた頃の姿とのギャップ。

 それが女心を打ち抜く。


 そして話してみると、アルノードは結構気安いタイプの人間だ。

 上司であるということに気兼ねせず、割となんでも言えてしまう。 

 舐められているわけでもなく部下と上手い関係を作ることのできる、理想の上司タイプと言える。


「このままじゃマズいのよ! この気持ちはみんなも同じはず!」

「それは……たしかに」

「元から高かった倍率が更に上がっただけ、とも言えるヨ」

「でもあのアルノードさんですよ? 少し関わるようになったくらいで、簡単にコロッといくようなこともないと思いますが……」


 アルノードの悪い点。

 それはとにかく他人の気持ちに疎いところである。


 彼はとにかく自分に対する好意に鈍感である。

 まさか自分に懸想するわけ……などと考えて、そもそも向こうが自分のことを好いていると考えない。

 心のどこかでブレーキをかけてしまっているのだ。


 それは今まで、第三十五辺境大隊のみんなで仲良くやっていく上では良い点ではあった。

 痴情のもつれで人死にが起こりかねない環境では、アルノードが誰かと付き合えば、それだけで連携にヒビが入りかねなかった。


 しかしリンブルに来てからは、命の危険に直結するようなことはほとんどなかった。

 ウルスムスとの戦いがこのアルノードの変化が起こる前に起こってくれたことは、『辺境サンゴ』のみんなにとっては幸運だったのかもしれない。


 エンヴィーたちはどうしてもバルクスの頃の感覚が抜けておらず、自分が抜け駆けをしては……という思いを抱えている。


 けれど最近になってアルノードと接するようになった者たちは違う。

 彼らは今、アルノードに好意を持つようになったのだ。


 恋は弱肉強食とばかりに、アルノードは最近は積極的なアプローチを受けている。

 対して女性経験がないと断言できるアルノードがコロッといってしまう可能性は、決してゼロではない。


 ここにいる古参の面々は、みな焦りを感じていた。

 エンヴィーの危機感を共有したことで、議論が白熱する。


 ああでもないこうでもない。

 もういっそのこと、普通に告白を。

 ダメ、勇気が出ない!


 そんな不毛な会話をしていると……ドアの開く音が。


 そこからのっそりと現れたのは――ボサボサの髪をした、エルルであった……。





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