ようやく
あれから、メンバーたちと話す機会は大切だなと思い、色んなパーティーのところにお邪魔させてもらうことにした。
ハーレムパーティーも何個かあったが、やっぱり女と男だけで固まっているところが多かったな。
そもそもの話、うちの『辺境サンゴ』は女の割合の方が圧倒的に高い、どちらかと言えば女社会寄りの場所だ。
なので男も肩身が狭いらしい。
他のクランメンバーたちのところにも行ってわかったが、結構みんなごとに違った事情があるということだ。
面白いことに、既にパーティー内でデキている男女も複数いた。
クッ、俺ですらそこまではいっていないのに……と思わなくもないが、幸せならとやかく言うつもりもない。
無論男女の関係なので『辺境サンゴ』の外とも繋がりのある者は、意外に多かった。
こちらはどちらかと言うと男の方が割合が高かった。
オリハルコン級冒険者クランに所属しているクランメンバー。
そのリーダーである俺が、王位を継承する第一王子ソルド王太子殿下の大のお気に入り。
稼ぎも良くて、将来いくらでも潰しが利きそうなだけの戦闘能力なり指揮能力なり、クラフトの能力がある。
市井に出ると、それはもうめちゃくちゃにモテるらしい。
中には女の子をとっかえひっかえにしていたり、泣かせたりしている奴もいたので、とりあえずそいつらは隊長権限でぶん殴っておいた。
ただ俺はまったくモテていない。
これはまったくもっておかしなことである。
あれだろうか。
大手の商会の商会長は忙しすぎて働きづめで、金があっても使う暇がない。
支店長や支店のエリート社員の方が時間にある程度余裕があって、結果としてモテる……みたいな感じなのだろうか。
ただみんなの暮らしぶりとかは見て回ることができた。
基本的に酒を飲みながら話せば、割と下世話というか仕事に関係のない、堅苦しくない話もできるようになるからな。
生活事情とかも聞けたし、仕事の愚痴もちょっとだけ聞けた。
やはり中には、長期の野営なんかをしんどいと思う、普通の感性の子も居たようだ。
そしてみんなと話していく中で、一つ言われて衝撃を受けたことがある。
女性隊員の一人に、子供を作った場合にどうなるかという相談をされたのだ。
俺自身そういうことにあまりにも縁遠いため、そんなこと考えたこともなかった。
軍隊の場合は妊娠した兵はそのまま除隊させてはいおしまいという感じで、慈悲はほとんどなかった。
特に手当や保障がないため、少なくとも第三十五辺境大隊に入ってから妊娠した女性はいなかった。
妊娠させた男は居たが……まあそこらへんは自己責任だからと、仕事頑張れよくらいしか言うこともできることもなかった。
けれどさすがに彼女たちは、俺を信じて軍を除隊してリンブルまで来てくれたのだ。
もし彼女たちにおめでたがあったのなら、それを最大限祝ってやれなくて何がクランリーダーだという話だ。
誰かが妊娠したり、他の子を妊娠させた場合にどうするべきか。
妊娠したメンバーに戦闘をさせるわけにはいかないし、もし誰かを妊娠させたメンバーがいたら、多分気が気ではなくて変な怪我が増えるだろう。
とりあえず事務処理担当として働いてもらっているサクラと一緒に協議し、俺は『辺境サンゴ』に育休制度を導入することにした。
これは簡単に言えば、妊娠時や赤ちゃんの頃の手が離せない時期に長期休暇を認めるという制度である。
無論原隊復帰も可能にしておく。
そもそも給金自体は高いから家政婦なりなんなりを雇うくらいの貯蓄もできるはずだ。
もし子供が生まれたら、彼女たちにはクランハウスを出て家を借りてもらうつもりだ。
ある程度大きくなってきたら、託児所みたいにするという案もある。
この辺は実際にやってみてからの判断だな。
また、一度母になれば、もう戦いたくないと思う女性も多いかもしれない。
サクラをトップにして今後拡張していく予定の『辺境サンゴ』の事務部門の方へ転身できるための組織作りもしていこうという話になった。
そしてそんな風に組織内の風通しを良くしていたり、今後のことを考えてああでもないこうでもないと話をしているうちに時間が経ち。
ようやっと開通したラインを使い、ソルド殿下と通信を行う時がやってきた――。
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