勧誘
「将来のことを考えたら、絶対どこかで叙爵を狙った方がいいぞ」
冒険者なんぞ、いつ野垂れ死ぬかわからない職業だ。
要は体のいい何でも屋だしな。
無論俺の方でできるかぎりのことはするつもりだし、どうしようもないような障害を負った場合の再就職先なんかの斡旋もできるよう、最近は動いたりもしている。
けどぶっちゃけ『辺境サンゴ』でやっていける期間なんかいいとこ数十年だろう。
稼ぎ自体はいいかもしれないが、その後のことを考えてみればわかる。
クランのメンバーは基本的に戦うことしか知らない脳筋ばかりだから、彼らが資産運用や商取引でまともに利益を上げられるとは思わない。
もし俺が死ぬなりなんなりしてクランが解散したら、その後はかなりキツいことになるはずである。
息子にある程度の財産を残すか、息子に地位とそれよりは若干少ないかもしれないが、ある程度の財産を残すか。
どっちがいいかなんて自明の理だ。
「いやまあ、それはそうなんですけどね」
「今は抜けない方がいい理由の方が多くて。もちろん、アルノードさんへの義理だって忘れてないっすよ」
ヨシナたちも、自分たちの腕に自信は持っている。
彼らもしっかりと万全な状態で臨めば、複数のミスリル級の魔物を相手取れるくらいの実力はあるからな。
自分たちの腕があればある程度は成り上がれることも、しっかりと理解しているらしい。
「将来のことを考えたら、安定志向で行くべきなのはわかってはいるんですが……」
「こんなご時世だと、何が安定かって話になってきますよね」
だがそれでも彼らに抜ける気がないのは、簡単に言えば現在のリンブルの立場が微妙だからだ。
下手をすればデザントに飲み込まれかねない状況にあるリンブルに骨を埋めようとは、二人ともまだ考えられないらしい。
ついでに言うと現状のままだと、俺と一緒にいた方が安定しているというのと、自分たちを強くしてくれた俺への恩を強く感じているのも大きいらしい。
俺への恩はありがたくはあるが……そんなに気にしなくてもいいのに。
ここまで来るのは、俺だけじゃ無理だった。
みんなの協力があったおかげで、今の俺はこの立ち位置にいることができているんだ。
お前たちが俺に助けられたと思ってるのと同じくらい……いや、下手をすればそれよりもずっと。
俺はお前たちに助けられてると思ってるよ。
ただ……俺と一緒にいた方が安定っていうのは少し問題だな。
たしかにもしメンバーが抜けて病気になった時に、俺が直接治しにいけないせいでもしものことが……なんて可能性もゼロではないわけだし。
メンバーが抜ける時には、餞別として俺が本気で作った『回復』の魔道具を与えることなんかも考えておく必要があるかもしれないな。
とりあえず男性陣のことはわかったので、次は女性陣の方だ。
「ヨハンナたちの方はどうなんだ? 結構勧誘とかされたりしたか?」
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