気が大きく
『暁』の面子が住むことになっているクランハウスは、俺が普段寝泊まりしているところから歩いて十分もかからないところにあった。
結局ばらけていては都合が悪かろうと、いくつか屋敷が連なって空いていたところを、複数箇所借りて使わせてもらうことになっている。
場所はそれほど離れていないから、いざとなれば狼煙を使えばさほど通信をするのも難しくない。
別に本気で走っても数分で着くしな。
ただ居住環境なんかよいに越したことはないので、ソルド殿下はかなり豪華めな、元貴族や豪商なんかが使っていた屋敷ばかりを俺たちに選んでくれていた。
ソルド殿下の口利きがなければ、居住費だけでもかなりの額になっていただろう。
こういう細かいところの配慮が利いているのは本当に助かる。
全員が酔い潰れているわけではなかったので、二人をなんとかして歩かせて、もう二人を両脇に抱えながら、えっちらおっちらと歩いていく。
屋敷が見えてきた。
あとちょっとだぞと後を幽鬼のようについてくるヨハンナたちに声をかけながら、進んでいく。
ああおいミリィ、そんなやばそうな顔をするな。
お前吐くの我慢してるだろ、ちょ……俺のローブに吐こうとするなっ!
「あ、アルノード隊長だっ!」
「どうしてアルノード様がこちらに?」
本来よりも少し長めに時間をかけて、なんとかクランハウスへやってきた。
ドアを開けると、すぐに『辺境サンゴ』の面々が玄関に顔を出してくる。
俺たちが来るのに事前に気付いていた者も、そうでない奴らもいた。
このへんはオフの時にしっかり休むか、仕事の時のクセが完全に抜けていないかという違いだろうな。
無論俺は、後者の方である。
俺も割と、休みの日でも敵影とかを探しちゃうタイプだ。
そして訓練をサボって弱くなるのが怖いので、オフの日であっても鍛錬は欠かさないようにしちゃうタイプでもある。
俺がミリィたちを渡すと、彼女たちが着ている服が朝着ていった物と違うことに気付いたようだ。
まあ俺が着せたの、なんの変哲もない無地のシャツだからな。
オシャレさんな彼女たちからすれば一目瞭然なのだろう。
彼女たちはスンスンと匂いを嗅ぎ、俺が香水の匂いを漂わせていることに気付いたようだ。 そしてミリィも同じ匂いをしているということにも。
「隊長……お疲れ様です。お手を煩わせてしまい申し訳ないです」
「いや、俺の方こそスマンな。なんだか思っていたよりもずっとはっちゃけさせてしまっていたようで」
ミリィが戻して俺がそれを処理した。
多分みんな薄々は何が起こったを察していたが、詳しいことは聞かずにいてくれた。
ありがたい。
浄化じゃ完全に匂いが取れなかったからな……香水なんか使ったの、かなり久しぶりだぞ。
「ご迷惑をかけたお詫びというわけでもないですが、一杯お茶でも飲んでいきませんか?」
「ん? ああ、じゃあそうさせてもらおうか。酔いを覚ましてから戻ることにしよう。あ、あとだな……」
俺のことは今日から一律アルノードさん呼びにしてくれ。
そう言って親指をグッと立てると、みんな苦笑しながらも了解してくれた。
……なんだか今日の俺は少しはっちゃけている気がするな。
お酒を飲んで気が大きくなっているのかもしれない。
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