侵入
さて、一夜明けて。
寝ぼけ眼を擦りながらベッドから起き上がると、もぞもぞと生き物の動く気配。
いったいなんだとぼーっとしながら目線を下げると……そこには柄もののパジャマを着た、マリアベルの姿があった。
「……はあっ!?」
どどどどうしてこいつが俺の部屋に居るんだ!
たしかに入っている家自体は一緒だけど、部屋はちゃんと別々にわけてもらったはずなのに!
「……あ、隊長。おはよ」
「いや、おはようじゃなくてだな……」
ごしごしと目を擦りながらもマイペースを崩さないマリアベルを見ながら、でかでかとため息を吐く。
今日もうちのクランメンバーは絶好調なようだ。
絶好調すぎて、俺に理解ができないのがたまにきずだな。
「あ、おはよーございます隊長」
「ちょ、マリアベル、何勝手に隊長の部屋に……」
「あはは、隊長、お酒持ってきたから一緒に飲もうヨ。みんなが労働している中飲むお酒は最高ネ!」
「……いや、ここ俺の部屋なんだが」
何故かマリアベルだけじゃなく、他の奴らまで続々と俺の部屋の中に入ってきた。
ノックの一つもなければ、既に酒を飲んでやりたい放題の奴もいる。
なんだお前ら、自由か。
何もすることないと、ここまでだらけることができるのか。
そしてここは俺の部屋だ、お願いだからさっさと出てってくれ。
お前らと一緒に居ると、俺一人の時間っていうものが作れないんだよ。
俺は割とそこら辺も重視するタイプなんだよ。
ほら、人間誰しも孤独な時間は必要だろ?
もしかしたら冒険者クランのリーダーに、基本的人権などというものは存在していないのかもしれない。
クランリーダーはあらゆる艱難辛苦に耐え、プライバシーを侵害されても文句の一つも言わず、隊員の命令には唯々諾々と――って、んなわけがあるかっ!
「ここは俺の部屋だ! 全員、さっさと出て行けっ!」
俺は勝手にベッドで眠っていたマリアベルを含めた全員を、自室から無理矢理押しだした。 なにげに全力で抵抗してこようとするメンバーも居たので、俺も容赦なく気力を使って退出させてやった。
一人になった部屋を見ると、カーペットに左右五本ずつ、細い線が残っている。
「いやですうぅぅぅ」と言いながらごね続けていたエンヴィーを無理矢理追い出そうとした時に、彼女はカーペットを掴んでなんとしてでもこの場に居座ろうとしていた。
それを強引に引き剥がしたせいで、跡が残ってしまっている。
これ……弁償ものだよな。
まあ多分あいつらと一緒に生活をするようになったら、ものどころか家屋も壊れるようになるだろうから、今更だ。
よりよい物を作ると約束した上で、壊れても許してもらうことにしよう。
(――しかし、さっきまでぎゃーぎゃー騒がれていたせいか。一人になると、なんだか急に寂しくなった感じがするな)
誰かと居る時は一人になりたいと思い。
一人の時はそれはそれで寂しい。
人間とはなんと、ままならない生き物なんだろうか。
……いや違うな、俺がめんどくさい性格をしているだけか。
でもいきなりこれだと、大分先が思いやられるぞ……。
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