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歓待


 ガードナーで俺たちを待っていたのは、領民総出での歓迎だった。

 なんでも領主(ここはアルスノヴァ侯爵領なので、厳密に言うと領主の代官)が、今をときめく『辺境サンゴ』が来るということで、いくぶんか奮発して歓迎会のようなものを開いているらしい。


 タダ酒タダ飯が食えるとあって、領民たちの態度はそれはもう温かい。

 現金だが、まあそんなもんだよなぁとありがたく歓待を受けることにする。




 お貴族様相手の堅苦しいものは苦手だという話が通っていたからか、呼び出された俺たちを待っていたのは立食式のゆるーいパーティーだった。

 ガードナー周辺の貴族の何人かの名代やお貴族様本人なんかもやってきてはいたが、特に形式張ったようなやりとりもなく。


 俺がソルド殿下のお気に入りだということを知っているからか、今後ともよろしくお願いしますという社交辞令じみた挨拶だけすると、そこまでしつこく関わってくる輩はいなかった。


 なのでどちらかと言えば、大人たち相手の神経を使うやり取りではなく、目をキラキラと輝かせている子供たちと話をすることの方が疲れたほどだ。


 好奇心旺盛な彼らは、最近巷で噂になっている俺たちのことを、あれやこれやと聞いては大きな反応をしてくれた。


 今の俺たちがどんな風に見られているのか……直接聞くと、なんだか気恥ずかしくなってくる。





 俺はデザントで頑張って仕事をしてきたが、見限られてしまった不遇の魔導師。


 失意に暮れていた俺は、ある日攫われてしまったオウカを捜索するサクラと出会う。

 そして新たに守る決意を固めた俺は、オウカを颯爽と救出。

 その力を今度こそ誰かを守るために使おうと、アルスノヴァ侯爵の下へつくことを決めた……。




 俺が彼らから聞いた話では、どうやらそんな感じで美化されているらしい。

 領民の視線が美男美女であるクランメンバーではなく、俺の方に集まっていたから少し不思議だったんだが……俺の知らないうちに、気付けばどんどんすごい話になってしまっていた。

 なんだか怖くなってくる……あと数年もしたら、もっと尾ひれ背ひれがついたりするんじゃないだろうか。


 とにかく俺は、リンブルの未来のために戦う憂国の士ということになっているらしい。

 この話を聞いて、少し疑問に思ったことがある。


 アルスノヴァ侯爵は、何故自分の愛娘であり嫡子でもあるオウカが誘拐されたことを、わざわざ噂話にして流しているのだろう。

 次期当主が誘拐されるというのは明らかな醜聞だが、そんなことを広める必要があるのだろうか……?


 俺との出会いを強調したいにしても、少しやりすぎな気もする。

 もしかして人の口に戸が立てられないと、勝手に広まってしまったのか?

 だとしたら少しマズい気がする。

 今度時間の余裕があるときに、サクラに聞いてみることにするか。


 こうして、今までの俺の功績をいくらでも聞きたがる貴族のご子息たちをなんとか捌ききった頃には、俺は既にかなりクタクタになっていた。


 うーん、これはこれで疲れるな。

 下手をすれば魔物と戦うよりも。


 だがそのおかげで、今日はぐっすり眠れそうだ……。 


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