ガードナーへ
「俺たちがいなくて、問題は起こりませんか?」
「起こるかもしれん。だが、そうではないかもしれん。そんなのはやってみるまでわからない……が、今ならばもう、いざという時に助けを呼ぶこともできるだろう?」
「それは、たしかにその通りです」
俺が没頭していた仕事の中には、シュウと一緒にやっていた『通信』の魔道具作りも含まれている。
最近は純粋に距離を伸ばしていく方面の研究が進んでおり、通信可能な距離はどんどんと伸びつつあった。
『通信』の相互間の距離が長くなった場合、双方向的な通信は難しくなる。
そのため地中からケーブルを通し、導魔性の高い素材や金属を使うことで……って、また仕事のことで頭がいっぱいになりかけていた。
要はめちゃくちゃ金と人員を使えば、即時の長距離通信もできるようになってきているということだ。
まだ実験段階なので耐用年数に関しては怪しい部分があるが、俺とシュウが居て適宜直すなり指示を出せば、王都とどこかを繋ぐことくらいは問題なくできる。
ソルド殿下は現在、この技術をちらつかせて商人たちからひたすらに金を巻き上げまくっているらしい。
俺とシュウに入ってくるボーナスだけでちょっとありえない金額なので、恐らく商人たちの懐は恐ろしい状態になっているのではないだろうか。
さすがに経済に支障を来すところまでぶっこ抜きはしてはいないだろうが……この人、こんな大雑把そうな印象のくせに、実際は割と曲者だからなぁ。
「まあ本音を言ってしまえばだ。多分これから、リンブルは少々きな臭くなる。そして俺は、身内の錆びは自分で落としたいタイプなんだよな」
――内戦が起こっても、自分たちで処理がしたいってことか。
たしかに俺たちは少々でしゃばりすぎた。
ほとぼりを冷ます期間は必要かもしれない。
俺たちはクランの割に、少々国のために働き過ぎていた。
それこそリンブルのどこかで、冒険者らしいことをやってもいいのかもしれないな。
「前にガードナーあたりにクランハウスを持ちたいって話をしてたよな?」
「はい、隊員も結構あそこが気に入ってたみたいなので」
「ほれ、いくつか見繕っておいた。ガンガン増築させて、皆が使えるようにしてもいい。そろそろ危ない最前線じゃない僻地で安定した建築をしたいって業者も増えてきている。今ならタイミング的にはばっちりだ」
どうやらいくつか候補まで探し出してくれていたようで、その全物件の家賃はなんというか……ほぼタダみたいなものだった。
殿下なりのプレゼントってことなんだろう。
ならありがたく、受け取っておくか。
ほとぼりが冷めるまで……もしくは何か有事になるまで。
辺境生活を謳歌させてもらうことにしよう。
こうして俺のガードナー行きは決定した。
俺たちは一部教導用に残した人員を除き、みなでガードナーへと向かっていく。
……冷静に考えれば、みんなで冒険者らしい生活が送れるようになるのって初めてか?
まあ、とりあえずはゆっくりさせてもらおう。
どうせまた少ししたら、忙しくなるだろうしな。
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