vsウルスムス 15
『収納袋』という名前のせいで、この魔道具は袋でなければならないという固定観念に縛られている。
俺がそれに気付くことができたのは、今から何年か前の話だ。
『収納袋』に込められている空間魔法というやつは、かなり使い勝手と燃費が悪い。
それこそ『収納袋』という形にしてなんとかして道具単体で使えるようにでもしない限り。
空間魔法を習得する人間は、元から付与魔法の才能があるやつが、『収納袋』が作れるようになるために覚える者がほとんどだしな。
さて、それなら『収納袋』が別に袋じゃなくてもと気付いてから、俺は色々と試してみることにした。
そしてリュック型の『収納袋』のような延長線上にあるものから始め、最終的には内部の空間を拡張した馬車型の『収納袋』なんてものまで作ることができるようになった。
結果として袋の形状に囚われず収納する能力を有する物を作ることができるようになったわけだ。
そこに至るまでの開発なり、空間魔法を上手く込められるようになるまでの努力は一旦おいておくとして。
俺はウルスムスの火魔法の対策を考え出さなければいけないとき、ふとこう思ったのだ。
もしかして、防具型の『収納袋』とかも作れるようになるのではなかろうか……と。
結果としてシュウと一緒に試作をしてみると、不格好ではあるが作れるだけのめどをつけることができた。
久方ぶりにシュウと二人で共同作業を続け……そしてこの鎧型『収納袋』は完成した。
俺の場合はローブについているので、さしづめローブ型『収納袋』と言ったところだろうか。
これを作るにあたり一番難航したのが『収納袋』の持つ『収納』の力を、外向きに向けなければならない点だ。
というかこの調整に、ほとんどの時間を費やしたといっていい。
俺が求めているのは、究極的に言えば鎧型のなんでも入る『収納袋』ではなく、ウルスムスの火魔法を耐えられる鎧なのだ。
なのでこの外向きの『収納』の力はなんとしても必須だった。
なんだろう、イメージとしては。
相手の魔法攻撃を、巾着袋型の『収納袋』の口の中に、すぽっと入れてしまうような感じだろうか。
ただそんなことをしては中の物が黒焦げになり、おまけに内側から焼かれて『収納袋』が燃え尽きてしまうだけなので、そのあたりには工夫が必要だった。
具体的にはとにかく火に耐性のある魔物の素材を層状にして配置し、とにかく火を通さないということをコンセプトにして作らせてもらっている。
そのためこれを着ければあら不思議、ウルスムスの火魔法であってもかなりの部分を減衰させることができる。
けれどもちろん、欠点というかカバーし切れていない部分もある。
そもそも火魔法以外に対してはそこまで強い耐性がないこと、そして魔法攻撃の余波や直接のマジックインパルスなんかを使われると、それらを受け止めきることができず、衝撃そのものは伝わってしまうのだ。
ウルスムスにはそこのまだ改良の余地のある部分を、とうとう見抜かれてしまった。
けれどあいつにかなり火魔法を無駄打ちさせることができたし、さっきなんか大規模殲滅魔法を使わせることだってできた。
おちょくって頭を沸騰させる手伝いもしてくれたし、近付いてとにかく攻撃してウルスムスを削ることもできた。
開発した魔道具一つでこれだけの効果が得られたのだ。
それ以上を望むのは贅沢というもの。
さて、かなり削ってはいるはずなんだが。
ウルスムスの底は、果たしていったいどこにあるのか……。
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