vsウルスムス 13
炎へと飛び込んだ俺は――若干の熱さを感じながらも、魔法を抜けひたすら直進し続ける。
ちらちらと揺れている火の向こうには、俺と同様ウルスムス目掛けて駆けているエンヴィーたちの姿が見えた。
「な、何故だ……何故俺の魔法を受けて、そのままごべぇっ!?」
一番最初に到達したのは、あらかじめ距離が近かったライライだ。
彼女の拳が結界をぶち破り、再度ウルスムスを捉えた。
今度は顔を殴られたウルスムスが、吹っ飛んでいく。
ライライはマジックインパルスが放たれる間も耐えていたため、エンヴィーたちとは違い至近距離を維持できていた。
その分より強烈な熱波は食らったようだが……幸い、使っている武器にも問題はないようだ。
オリハルコンは耐熱性が高いとはいえ、ガントレットの内側は相当な火傷を負っているはずだ。
後で治してやらなくちゃな。
ウルスムスはそのまま、俺目掛けて飛んでくる。
パンチによる推進力のおかげで、ドラゴンの滑空並の速度が出ている。
「くっ……貴様のせいでえっ!!」
ウルスムスは仕込み杖を掲げ、刺突の姿勢を取っている。
宙を飛んでいるため踏ん張りはきかないだろうが、体重を乗せた一撃であれば威力は十分という判断だろう。
「よし……これでようやくっ!」
だがその判断は誤りだ。
ライライの拳打で飛ぶスピードは、今の魔闘気なしの俺の、気力による身体強化で出る速度よりもずっと遅い。
痛みに慣れていないのが裏目に出たな。
これからは結界魔法で守るだけじゃなく、きちんと攻撃を食らってから回復するやり方もやっておくといいぞ。
交差、瞬間の沈黙。
瞬きにも満たぬ間に、いくつもの攻防が繰り広げられ――ウルスムスの右腕から、血しぶきがあがる。
こうして俺はようやく、ウルスムスにまともな一撃を食らわせることができた。
ここまで本当に長かったぞ……。
俺の一撃を食らい、ウルスムスはさすがに踏ん張ってから大きく後退。
しかしそこには、攻撃準備を終えているエンヴィーたちがいる。
彼女達も一部火傷をしている箇所はあるだろうが、問題なく動ける範囲に収まっている。
想像以上にダメージを受けていないその様子にウルスムスが驚き、距離を取ろうとする。
既に何発も攻撃を食らい、おまけに俺の一撃によろめくウルスムス。
いかに『七師』とは言えど、ここまで手負いの状態になれば、決して手の届かない天上の相手ではなくなる。
未だほとんど戦っておらず、万全に近い状態のエンヴィーたちが吶喊する。
彼女たちの握る『龍牙絶刀』からは、白い靄が立ちこめていた。
ドラゴン素材を使った武具は、体力を消費することで、性能を底上げすることができる。
気力ともまた違い、直接的に生命力を使うその一撃は、一度の戦闘でそう何度も使える代物ではない。
数度も使えば立てなくなるほど消耗してしまうその一撃の使い処を、彼女たちは今この瞬間だと睨んだようだ。
ウルスムスが、犬歯を剥き出しにしながら叫ぶ。
エルルが彼の足を裂いた。
腱が断裂するブチンという音が聞こえる。
エンヴィーが利き手である右手を斬った。
切り飛ばすには至らなかったが、上手いこと傷をつけたからか血が噴き出す。
そしてマリアベルの攻撃が、ウルスムスの顔面目掛けて放たれる。
目を貫通しそのまま脳を狙いに行く、一撃必殺のその突きを……ウルスムスは強引に身体を動かし、口で受け止めた。
口中が切れ、歯が鳴ってはいけない音を鳴らすが……ウルスムスはありえないことに、攻撃を完全に口で防ぎきる。
彼はそのまま驚愕に目を見開くマリアベル目掛け――地獄の業火を発動させた。
【しんこからのお願い】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
「ウルスムス!?」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!
よろしくお願いします!