vsウルスムス 12
エルルが最後の結界を割り、エンヴィーがその隙間に剣をねじ込む。
剣はウルスムスの腹部目掛けて放たれ――そのまま突き立った。
そのままマリアベルが脚部目掛けて突きを放ち、それも命中。
三人が距離を取るのと同時、ライライが思い切りウルスムスの背中を打ち付けた。
攻撃をすべて食らったウルスムスは、再度地面に打ち付けられた。
エルルたちはアイコンタクトをしたあと、そのまま連撃の姿勢に移る。
今の一連の攻撃だけでは仕留めきれてはおらず、距離を取ればウルスムスの魔法の餌食になりかねないからという判断だろう。
それは正しい、俺もそうすると思う。
だがなんだろうか、この感覚は……。
「……ふっ……」
ウルスムスの吐息が漏れる。
――瞬間、悪寒がした。
背筋に氷水を垂らしたような、冷たい気配が。
「下がれっ!」
俺が叫べば、即座にエルルたちは追撃を止め後退する体勢に入った。
彼女たちが脇目も振らず後退するその背中に、衝撃。
魔力による衝撃波――マジックインパルスが質量を伴い、エルルたちを吹っ飛ばした。
俺の方にまで余波が飛んでくる。
同じくマジックインパルスを返すだけの魔力的な余裕がないので、しっかりと踏ん張ってその衝撃を受け止める。
ピリピリと、肌に突き刺さるようなプレッシャー。
毛穴が収縮し、粟立つ。
それは今日何度も繰り返してきた攻防のどれよりも、俺に命の危険を伝えてくれていた。
「ふっ……あっはははははははっ!」
目を見開く俺と、衝撃から地面に転げているエンヴィーたち。
自分が戦っている者全てを嘲笑うかのように、ウルスムスは腹を抱えて笑い出した。
「アッハッハッハ! ――死ね」
業火が、網膜を焼かんばかりの激しい炎がウルスムスの周囲に、とぐろを巻いていく。
ドンドンと大きくなってくる炎の渦が、拡がるのを止め、その破壊力を内側に溜めていく。
そして……発散。
炎が迫ってくる。
空から、地面から、そして中空から。
この世界の全てが、炎に包まれてしまったかのような光景だ。
これは間違いなく、ウルスムスの放つ超級魔法。
恐らくは――数万人の人間を焼き殺したという、大規模殲滅魔法だ。
その余波でデザント兵を焼き殺せるだけの魔法。
中心部に近い場所で食らえば、果たしてその威力はいかほどか。
俺はウルスムスからようやく大規模殲滅魔法を引き出すことに成功し――ほくそ笑んだ。
隠蔽していても、魔力の残量がかなり少なくなっているのは、ウルスムスの疲れた様子を見れば明らかだ。
よし、もう一押し――。
俺は迫り来る炎へ、自ら近付いていく。
そして炎の渦へと飛び込み――そのままウルスムス目指し、全力疾走を開始した。
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