vsウルスムス 10
結界ごとウルスムスをぶち抜いたのは、限界ギリギリまで酔いを回らせたライライだ。
ウルスムスの結界をまともに打ち抜ける面子は、現状だとマックス打点のライライしかいない。
俺がわざとらしく『魔力筒』を打ちまくり、派手に魔法をばらまいていたのは、遠くからこちらを観察していたライライたちに機がやってきたことを知らせるためだ。
ウルスムスの感知能力は確実に俺より高いため、かなり遠くに待機させていたからな……。 想定より来るまでに時間がかかったので、正直ヒヤヒヤものだった。
ライライの一撃を食らったウルスムスは、自分の身に何が起きているのかもわからぬまま、バウンドしながら地面を転がっていく。
拳の形に凹んだ頬は赤く腫れており、その目は驚愕に見開かれている。
「アハハッ、いけるとこまでいくヨ~!」
「ごっ、がっ、ぶふっ!?」
右ストレート、引いて溜めを作りながら左で再度ストレート。
息つく暇なく、アッパーカット。
空へ打ち上げられたウルスムスの腹を、先回りしたライライが打ち抜く。
両手を固く結んで放った一撃に、ウルスムスが地面へ思い切り叩きつけられた。
衝撃波が発生し、地面にはクレーターができる。
「これでラストッ!」
ライライは中空でくるりと一回転し、勢いを増したまま思い切り高度を下げていく。
グッと握られた拳が、気力の凝集により発光している。
そして放たれる、全力の一撃。
ドッと土煙が舞い、視界が一気に閉ざされた。
ライライはラッシュを終えると同時、即座に後退。
徐々に魔力欠乏症から回復しつつある俺の下へとやって来る。
そして観戦、というかライライの連撃を観察しているうちに、エンヴィー・マリアベル・エルルの三名が俺の周囲を固めるかのように立っていた。
「隊長、ご無事でしたか?」
「ああ、なんとかな。魔闘気は削った。あとはエンヴィーたちでも戦えるところまでは、もってけたはずだ」
「身体……ボロボロ」
「治す暇がなかったからな」
言われて気付いたので、応急処置だけで済ませていた箇所へポーションを振りかけていく。
合わせて魔力貯蔵型の『回復』の魔道具を使って、傷を完全に癒やしていく。
気力をグルグルと回すと、内側に籠もる熱が少しだけマシになった。
「これで、終わり……」
「――な、わけがない。見ろ、あれを」
俺の視線の先、土埃が舞うクレーターの中心部には……立ち上がりこちらを睨んでいるウルスムスの姿があった。
頬にはわずかに赤みが差しているが、既に腫れは引いている。
隠蔽が上手いせいで、総量の把握はできていないが……まだまだ魔力には余裕がありそうだ。
「雑種が……貴様、魔導師の神聖な決闘をなんと心得ている!?」
口から泡を飛ばしながら叫ぶウルスムス。
俺と戦う前のような余裕の表情は、既に消えている。
俺への憎悪とプライドを傷つけられた怒りで、完全に周りが見えなくなっている。
……よし、もっと俺を見ろ。
いや、今はもう違うか。
もっと、俺たちを見ろ。
「生憎俺は、最初から一対一で戦うとは言っていない。これは決闘じゃなくて戦闘だよ。何人でかかろうが、最後に勝てばいいのさ」
「貴ィ様ァ……」
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