vsウルスムス 7
斬撃が飛んでくる。
ウルスムスの動きが早すぎるせいで、既に剣の軌道が二つに分裂して見えている。
高速で左右に動いているため、あれは両方とも質量を伴った攻撃になる。
対する俺はこれ以上出力を上げれば、ガス欠になる。
黙って剣を水平に構え、背をかがめて防御姿勢を取った。
ザンッ!
ザクッ!
結果としてどちらの攻撃も弾くことはできず、二つともが俺にヒットする。
「っつう……」
思っていたより刃が深くまで通っており、さすがに痛い。
剣を抜こうとする動きよりも、ウルスムスがそのまま剣を押しつけてくる方が早い。
スッと撫でるように続く斬撃に、肩口から血しぶきが飛んだ。
後退、そして回復。
魔法はこれ以上の失血を防げればいいから、最低限しか使わない。
「ようやく動きが鈍ってきたなぁ、アルノードォォォ!」
「おっ、まえが――速くなっただけだっつうの!」
剣と剣がぶつかり、甲高い音が。
そしてそのすぐ隣で、更にそのまた隣で同様の音。
高速で移動しながら戦っているせいで、荒野を縦横無尽に駆け回りながらの戦闘だ。
あちこちに血が飛び、バリバリと結界は割れ続け、俺とウルスムスはどちらとも額に汗をかいている。
俺の攻撃は、未だウルスムスには届かない。
その全てが結界によって阻まれ、そしてようやく本丸へ突っ込めるかというところで修復される。
地力が違うため、既にウルスムスの速度は俺を圧倒的に凌駕し始めている。
けれど既にウルスムスの攻撃パターンにも慣れてきているおかげで、致命傷だけは負わずになんとか戦い続けることができていた。
基本的には防戦一方だが、まだやれないことはない。
時間制限付きとわかっているのなら、耐えることは十分にできる。
俺はこれ以上魔力と気力の消費量を上げるわけにはいかない。
だからここから先は……俺という人間の、アルノードとしてのギアを上げる。
研ぎ澄ませ――全てを。
考えるな、感じろ。
ウルスムスが距離を取ろうとする。
即座に詰めて、その動きを許さない。
相手を罵倒してやれば、あいつは激昂しながらこちらへ向かってきた。
遠距離から一方的に潰すだけじゃあ、お前のプライドが許さないもんな。
俺程度、完膚なきまでに圧倒しなくちゃいけないと思うほど、自尊心が高くて助かるよ。
再び近距離戦。
ウルスムスの方も慣れてきて、千日手になりつつあることを察してか、近距離戦の距離を保ったままで魔法の発動準備をし始める。
ウルスムスの大気を割るような一撃を、躱し横っ腹狙ってカウンター。
パリンと結界が割れるところまでは、いつも通りだ。
再度後ろに下がろうとする俺を、ウルスムスが睨む。
「ファイアアロー」
そしてそのまま、炎の槍を放ってきた。
ウルスムスは己の火魔法の後ろへぴったりとつき、己の姿を隠した。
俺もようやく攻撃のモーションが終わったばかりのため、あまり派手な回避軌道は取れない。
なんとか必死に剣を上げ、被弾面積を減らすのが限界だった。
ウルスムスが放てば、ただのファイアアローでも上級火魔法並の威力へ早変わりする。
魔法はそのまま着弾。
俺は炎に包まれ――。
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