vsウルスムス 6
攻撃がくる。
食らう、そして即座に回復。
再度攻撃、これは食らうと危ない。
結界魔法を展開。
一瞬で破られるが、勢いは殺せた。
出鼻を挫いた一撃であれば、今の俺でも十分つばぜり合いができる。
運動能力に大きな差がある以上、攻撃を見てから避けるということはできない。
なのでなるべく魔力消費が節約できるよう、防御の仕方だけを細かく変えていく。
反撃は適度で構わない。
向こうが全力で攻撃を続けても問題ないと思えなくなるよう、時折強めの一撃を放つだけで問題ないからだ。
「チイッ!」
頭にカッと血が上り、ウルスムスがまた更に使う魔力と気力の量を増やした。
このままではさすがに分が悪い。
俺も魔闘気の量を増やし、それに対応。
しばらくすると再び同じ状況へ戻る。
剣撃による応酬をする度に、周囲に衝撃波が飛んでいく。
お互いがドンドンとギアを上げていくせいで、余波も比例して大きくなっていく。
土がめくれ上がり、まばらに生えていた草が飛んでいき、そして俺の魔力がすごい勢いで目減りしていく。
戦いながらも、常に気力感知でウルスムスの気力の残量を確認することを忘れない。
魔力量の隠蔽に関しては俺をはるかに凌ぐウルスムスであっても、気力の扱いはその道のプロと比べると一等劣る。
なので常に見ておくのは、無尽蔵に思える魔力量ではなくその気力。
魔闘気はどちらかが尽きれば使えなくなるからな。
「シイッ!」
「クッ――」
俺はウルスムスが距離を取ろうとすれば、それを詰めなければならない。
遠距離の魔法の撃ち合いが再度始まらぬよう、細心の注意を払う必要がある。
「ほらどうした、お貴族様が俺程度に手こずってていいのか?」
「このっ、言わせておけば――」
だからこそ、常にウルスムスを煽り、俺と切り結ぶことだけに意識を集中させておかなければいけない。
激昂さえさせておけば問題ないから、これはさほど難しくはない。
ウルスムスには俺のような平民が何か言えば、全部自分をバカにしている言葉に変換してしまう耳があるからな。
だが俺の方も慣れてはきていても、決して余裕があるわけではない。
(……まだ上がるのか、こいつ)
ドンドンと上がっていくウルスムスの身体能力は、未だ限界が見えていない。
気力量は、ざっくり戦闘前の半分以下にはなっているはずだ。
けれどウルスムスは魔闘気を魔力多めにする形で、気力の消費量を明らかに絞っていた。
俺が素早く魔闘気を発動できるように、ウルスムスにもまた彼なりの魔闘気があるということだろう。
対して俺の魔力と気力の残量はどれほどか。
ざっくり概算すると――どちらも三割程度。
かなり細々と節約をしてこれなのだから、いつものように戦っていれば既にガス欠になっていただろう。
俺はわざわざ傷を増やしながら戦い、ウルスムスは結界を張り完全防備。
これだけ使用量に差がありながら、俺の方が微妙に不利なままという……。
本物の天才と戦うと、自分の非才さが嫌になってくるよ、まったく。
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