vsウルスムス 2
相手が使ってくる魔法を推測することはできなかった。
できるのは相手の魔力の爆発的な高まりを感知することだけ。
ウルスムスは高揚しており、顔は紅潮している。
間違いなく大技が来る。
俺は即座に、使う魔法のランクを一つ引き上げた。
「虚無界の灯火!」
「『超過駆動』テンペストサイクロン!」
上級魔法テンペストサイクロンを放ったのは正解だった。
ウルスムスが放ってきたのは、超級魔法である虚無界の灯火。
ウルスムスの炎が俺の放つ台風とぶつかり、互いに混じり合う。
そして火災旋風のように拡がっていき……そのまま消え去った。
よかった……この特級魔法であれば、俺でもまだ(・・)対処が可能で。
「ほう、残ったか……」
「聖別なんてもの、ハナから受けちゃいないけどな」
「――ハッハァ! 何を言う雑種、この俺による聖別だぞ、涙して喜ぶべき場面だろう」
こいつは自分の魔法を、周囲にぶちまける悪癖がある。
そしてあろうことか、それを自身で聖別と称していた。
ウルスムスが魔法で敵味方を問わず、大規模殲滅魔法でまるごと焼き殺したのも、こいつから言えば聖別。
自分の放つこの程度の魔法に耐えることもできなければ、そもそも仲間ではない。
そんな無茶苦茶な理屈を、さも正論であるかのように論じてくる。
根本的な思考回路が違うのだ。
「さて、次だ――」
ウルスムスが更に魔法を放つ。
そして俺はそれに対し、カウンター気味に魔法を返す。
一発目、二発目、三発目。
徐々に徐々に、魔法の威力が上がっていく。
俺はそれに対抗するため、より上級魔法魔力消費の多い魔法を使わざるを得なくなっていく。
俺自身、未だ『超過駆動』という技術を完璧に使いこなせているわけではない。
今の俺はまだ、『超過駆動』を使い超級魔法を発動させることができないからだ。
そして四発目、五発目。
ウルスムスの放つ火魔法は、本物だ。
こいつは戦闘能力だけならば『七師』の中でも上から数えた方が早かった。
こうしてやり合って、改めてわかる。
今の俺では、ウルスムスと純粋な出力勝負をしていては万に一つも勝ち目はない。
さて……それならば次は、どうするか。
「奈落の煉獄炎!」
「『超過駆動』マキシマムタイフーン」
俺の放てる上級魔法の中で最も高威力である、上級風魔法マキシマムタイフーンとウルスムスの超級魔法がぶつかり合う。
拮抗したのは、束の間。
数秒もすると炎は風を飲み込み、少しだけ速度を衰えさせながらも進んでくる。
気力による身体強化で、バックステップで退避し、なんとか難を逃れる。
ウルスムスにこれ以上付き合えば、俺も超級魔法を放たなければならなくなる。
そうなれば俺は、すぐにガス欠になってしまう。
となれば次に取れる手立ては一つ――。
俺は魔力を練ろうとするウルスムスに対し――魔法を放とうとせず、前に出る。
気力強化により上がった速度は、ドラゴンの飛翔速度を容易く凌駕する。
背中に差した剣を抜き放ち、一閃。
ウルスムスは俺の動きを見てから反応し、杖の底部を地面にカンと打ち鳴らした。
すると杖から、抜き身の刀身が現れる。
俺の『龍牙絶刀』とウルスムスの仕込み杖がぶつかり合い、火花を散らした。
「チッ――手癖が悪いな。神聖な魔法の撃ち合いを邪魔するなと、習わなかったのか!?」
「習ってねぇよ……生憎こちとら、孤児なんでねっ!」
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