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魔力反応



「ほらアルノード、何もなかったではないか」


 陛下が主催(ということになっているだけで、段取りをしたのはソルド殿下だ)の晩餐会もつつがなく終わり、プルエラ様たちは特に大過もなく帰路についた。


 俺が殿下の隣に立っていると、彼は自分の方が正しかっただろうと俺の心配性を笑っている。

 けれど俺は殿下の笑顔を見ても、頬を緩めることはしなかった。

 遠く離れていくデザントの馬車を見つめながらも、周囲の警戒だけは怠っていない。


「どうしてまだピリつく必要がある。もう問題……になる可能性のあったデザントの人間たちは帰ったぞ」

「そもそも問題になるような者たちは一人もいませんでした。俺の予想が正しければ、そう遠くないうちに来るはずです」

「……いったい、何がだ?」

「リンブルそのものか俺たちを壊しに来る何かが……ですよ、殿下」

「そんなバカなことが……」


 一笑に付そうとしたようだが、俺が真剣な顔をしているのを見てすぐに表情を変える。

 自分は信じられないが、さりとて俺の否定もしない。

 今はそれだけで十分だった。

 別に俺も確たる根拠があって言っているわけじゃない。


 俺の勘と、デザントの国王ファラド三世への悪い方への信頼から来ると思っているだけだからな。


 殿下の元を去り、待機していた『辺境サンゴ』の面々の元へ戻る。

 既にシュウも合流し、最終調整を行っていた。


 俺とシュウが合同で作ったとある魔道具は、試作を終え、必要な能力を持たせたまま無事エンヴィーたちに装備させることができている。


 今の彼女たちが身につけている防具は、今までの『ドラゴンメイル』ではない。

 それはうっすらとした虹色の膜の張った、ゴワゴワとしたドレスのような見た目をした服だ。


 百人隊長クラスの面々以外は以前と同様の『ドラゴンメイル』をつけているので、彼女たちの姿はめちゃくちゃに浮いている。

 だがこれも対策を練った結果だから、見た目の不格好さに文句をつける者は一人もいなかった。


「来ますか、隊長」

「――来る」

「そうですか」


 みな、何も言わない。

 上官が言ったことは、それがどれだけ間違っていても盲信するしかない。

 軍隊上がりのせいか、俺に対して文句をぶー垂れてくる人間はセリアのような極度のコミュ障を除けば一人もいない。



 みながめいめい、戦いのための準備を調えていた。

 平のクランメンバーたちには、いざという時に大規模殲滅魔法から身を守るための魔道具を渡している。

 ウルスムス以外の誰かが来ても、逃げることだけはできるはずだ。


 もちろん負けるつもりはないが、クランメンバーの命は最優先だ。

 本当は事前に避難しておけって言ったんだが、こいつら人の言うこと全然聞かないからな……いったい誰に似たんだか。


 ソルド殿下からは自由にしていいと言われているので、俺と一緒に有事の際に戦うメンバーは改めて想定した通りの戦闘演習を行っていく。


 勝率は……想定通りウルスムスが来れば、六割はあるはずだ。


 ウルスムス以外の『七師』が来ればまた話は別だが……今のデザントにとって癌になっているあいつをぶつけてくるのが、ファラド三世という王だと俺は思う。


 もし意外性や俺のこういった性根まで勘案して別の『七師』が来たら……その時は、俺が気張ればいいだけか。


 とりあえず自由に使っていいと貸し与えられた敷地を使い、ゆっくりと流れる時間に胃をキリキリさせることしばらく。


――ドッ!


 魔力をほとんど持たない平民でさえ感じ取れるような、馬鹿げた量の魔力反応が現れた。

 反応は王都からかなり離れている。

 場所は荒野だ、恐らくは余人を交えず戦おうという合図だろう。

 近くにいる魔法使いが、下手をすればショック死するようなデタラメな放出量だ。


 周囲の迷惑をまったく考えない実力者。

 自分はここにいるぞと周囲の人間に教えるその自負心の高さ。

 そしてこの魔力反応……間違いなく、ウルスムスだ。


「ではこれより、オペレーション・アンチグリードを開始する。無理をせず、しっかりと相手を封殺して勝つ。――大丈夫、絶対に上手くいくさ」

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