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幸せ


「私がもっと気を配っていれば……アルノードが国外に追放されることはなかったはずです」

「それは……いえ、そんなことはないと思いますよ、多分」


 俺がデザントを追放されることになったのは、平たく言えば王位継承者の派閥争いの余波だ。


 今では凋落しているらしいガラリオ第二王子がバルド王太子殿下を超える一大派閥を築き、デザント内で強い発言権を持とうとした。


 その宮廷工作の一環で、どこの派閥にも属しておらず、たまにプルエラ様とお話をするくらいだった俺はプルエラ派とみなされ、追放された。


 そして俺の後釜には、ガラリオ派の新たな『七師』ヴィンランドが座ることになった……という流れだったはずだ。


 元はと言えば、俺が宮廷内でいつも寂しそうにしているプルエラ様を放っておけなくて、つい話しかけたのが原因だ。


 それに妙な気を起こされる前に、それこそバルド王太子殿下の派閥にでも入っておけば、俺が放逐されるようなこともなかった。


 けど俺は政治工作とか面倒くさいと心底思っていたし、人間関係に時間を割く暇があったら「今作ってるスーパーな『収納袋』を完成させちゃうぞ~」と、研究にしか頭を向けていなかった。


 だから徹頭徹尾悪いのは俺で。

 プルエラ様が何かを気に病む理由など、一つもないのだ。


「でも……」

「それに、俺はデザントの人間を、誰一人として恨んではいません。ガラリオ殿下も含めてね」

「そう……なのですか? 本当に?」

「ええ、本当です」


 デザントを放逐されたときは、たしかに色々と思うことはあった。


 なんで俺が、とか。

 俺の活躍は地味かもしれないけど、大切なものだぞ、とか。

 今までの努力とか、全部無意味だったのかよって思ったりもしたし。


 けど、時間が経つにつれ、そんな恨みなんてものは消えていった。

 今ではむしろ、感謝しているくらいだ。


 だってバルクスで頑張っていなければ、俺は『辺境サンゴ』のみんなとも会えなかった。

 リンブルに来ることもなかっただろうし、そうしたらサクラやオウカたちに会うこともなかった。

 ある程度、気持ちの整理はついたんだ。


 俺は今、結構幸せだ。

 何不自由ない暮らし、心安い毎日、頼れる仲間たち。


 人生は選択の連続だ、なんて言葉があるが……今の結果を見れば、俺の選択は間違ってはいなかったんだと思える。


 終わりよければ全てよし。

 ここに至るまでの過程なんか、些細なことなのだ。


 だから、プルエラ様にはそんな悲しい顔はしないでほしい。

 王宮にある花壇で花の王冠を編んでいた時のような、笑顔でいてほしいのだ。


 デザントを出てリンブルに鞍替えした俺が言えた義理ではないとは、重々承知ではあるのだけれど。

 そう願わずにはいられない。


「そう……ですか……」


 プルエラ様はそれきり、黙ってしまった。

 けれど数秒もすると、バッと俯かせていた顔を上げる。


「わかりました。アルノードは今……幸せなのですね」

「はい、プルエラ様。ですので今すぐに、デザントに戻るつもりはありません」

「そうですか、わかりました」


 俺があらかじめ釘を刺すと、微笑しながらゆっくりと頷いた。 

 強かになったというか、なんというか。


 リンブル側の俺としては少し複雑だけど……でもこうして話ができて、やっぱりよかったと思う。


「今後も仲良くしたいものです」

「ええ、本当に」


 できれば今後も、デザントとリンブルの間を取り持ってくれと思うばかりである。

 こうしてプルエラ様の成長と、そして変わっていないところ。

 彼女の色々な顔を見ているうちに、平和裡に話し合いは終わった。

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