対面
後ろにいる騎士たちは、全員俺のことを物凄い形相で睨んでいる。
だがそれも当然のこと。
あいつらからすれば俺は国外追放されたとはいえ、かつてはデザントで禄を食んでいた元『七師』だ。
宮廷魔導師として国中の畏敬を集め、デザントのために尽くすと王の前で誓いを捧げたにもかかわらず、あっさりとリンブルに鞍替えをした、尻の軽い男。
しかもそいつはデザント式の魔法技術を使い、リンブルの防衛に精を出しているときている。
向こうの立場からすれば、俺を恨むのはまったく筋違いなことではない。
だが騎士たちは、口を開きはしなかった。
自分たちが仕えている人間がそれを求めていないことを、しっかりと理解しているからだ。
後ろにいる騎士たちの様子には気付かずに、プルエラ様が立ち上がった。
いくらか大人びたとはいえ、まだ体つきは幼い。
俺を見上げながら、何か言いたそうに口をもにゅもにゅと動かしている。
「アルノード……」
王族同士の会話に混ざれば、下手をすればそれだけでしょっ引かれかねない。
現在はただの一冒険者でしかない俺が会合に同席しているだけでも異常なことなのだ。
当たり前だが、口を開けば即不敬罪になりかねなかったので、俺は会談中は一言も言葉を発してはいない。
その間もプルエラ様がチラチラ俺の方を向かれるから、時折思わずしゃべり出しそうにはなった瞬間はあったけどな。
「お久しぶりです、プルエラ様」
けれど今は、護衛騎士を除けば人の目はない。
彼らの視線がいっそう険しくなることに目を瞑れば、俺を咎める人間はいないのだ。
俺が口を開くと、プルエラ様がパアアッっと表情を明るくさせた。
相変わらずわかりやすくて……だから親しみを持ちやすいお方だ。
「アルノード、私……あの、ごめんなさいっ!」
プルエラ様はバッと立ち上がると、そのまま勢いよく頭を下げた。
それに慌てたのは俺の方だ。
急ぎ顔を上げれば、騎士たちは俺たちは何も見ていないとばかりにそっぽを向いている。
王族が平民相手に頭を下げたなんてことが広まれば、それだけで醜聞になる。
それが今や国賊扱いされているだろう俺であれば、なおさらの話だ。
彼らの反応は、正直なところかなりありがたい。
「いったいプルエラ様が、何を謝る必要があるというのです。それに王族が人前で、庶民相手に頭を下げてはいけません、どうか面をお上げください!」
「いえ、私は……私には、できたはずなのです」
顔を上げたプルエラ様の目には――キラリと涙の雫が光っていた。
――プルエラ様を泣かせてしまった。
それほどまでに、俺の出奔が彼女を追い込んでしまっていたというのか。
どうか、涙を拭いてほしい。
俺は今、決して不幸じゃないんだから。
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