到着
とうとうデザントからの使節が到着するその日がやってきた。
『辺境サンゴ』のみんなはデザントの兵と揉めるだろうから、少し離れた場所で待機してもらっている。
デザントという国そのものに鬱憤も溜まっているだろうし、もしかしたらかつて上司だったような奴らもいるかもしれない。
もしかち合えば絶対に揉め事が起きるだろうというまったく嬉しくない確信が、俺にはあった。
それに明らかに二等臣民である属州民だとわかる見た目をしている者たちの多い『辺境サンゴ』のメンバーは、どれだけ強くともデザントの人間からは間違いなく舐められるだろうからな。
そのあたりの配慮を事前にしておいてくれるソルド殿下は、やはり人心というものをよくわかっている。
「もしものことがあったら頼んだぞ。自慢じゃないが、俺は弱い」
「さすがにこの場で手を出すことはまずないでしょうが、任せておいてください」
今俺はソルド殿下と共に、プルエラ様が引き連れてやって来るデザントのご一行を待っている状態だ。
殿下の背後には数人の兵士がおり、俺を信頼しているかのような台詞に少しだけ空気がぴりつく。
自分たちの実力では守るに足らぬと言われたと、そう感じているのだろう。
ちなみに彼らの装備は、俺が到着までになんとか間に合わせたため、マジックウェポンの『ワイバーンメイル』に更新済みだ。
「無論、お前たちを信頼していないというわけではない。未だ我らリンブルは足りぬ物だらけであり、魔法技術ではデザントに一日の長がある。だから今は『七師』であるアルノードの力を借りなければならぬ……そう、今はまだ、な」
含みのある言い方に、兵士たちは視線を交わし合う。
いずれはお前たちに任せるぞ、とも取れるソルド殿下の言葉に、何か感じるものがあったようだ。
そこらへんの人心掌握術は、さすがである。
敵意が薄れた護衛たちを背後に、殿下と並び一行の到着を待つ。
「いざとなったら、『辺境サンゴ』のメンバーが救出に来る手はずになっています。何かあれば、殿下は一目散にお逃げください」
「……何かが起こると考えているのか? ここは国交の場だぞ。そんなことをすれば連邦だけではなく、オケアノスまで敵に回すことになる。デザントはそこまでバカではないはずだが」
「デザントの上は賢くとも、魔法使いというのはどいつもこいつも、一癖も二癖もあるものでして」
「ふむ……そういうものか」
言外にデザントの意志ではない凶行があるかもしれないとほのめかすと、それだけでソルド殿下は納得したようだった。
……なんで殿下が、未だに王位を継いでいないんだろうな?
そもそも俺が来るまでに、アイシア第一王女がソルド殿下と張り合えていたというのも不思議だ。
王の器としてどちらがふさわしいかは、自明の理だろうに。
「お、先触れが来たぞ」
「そのようですね」
「では向かおう。さて、両国にとって良き日になるとよいのだが……」
ソルド殿下は、しっかりとしたデザント式の衣服に身を包んだ男へと近付いていく。
好奇心からか、単身向かおうとするその姿は、なんとも危なっかしい。
支えなくちゃと思わせるような何かがある。
その点だけ見れば、プルエラ様に近いところがあるのかもしれない。
二人の相性は、どのようなものになるのだろうか――。
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