作戦会議 3
「私たちが見つからないように接近さえできれば、なんとかなるんではないでしょうか」
「隠密性か……たしかにそれも大事になってくるだろうな」
エルルの言葉も理解できる。
見つかれば焼き殺されるだろうから、まず戦う際には俺以外のみんなに気付かれぬよう、俺にだけ意識を集中してもらう必要がある。
シュウに渡したあれが完璧に完成するとは思っていない方がいい。
できたとしても、全員に配り終えるのなんか時間制限的にも到底無理だろうし。
俺だけではウルスムスには勝てない。
だからこそ『辺境サンゴ』のメンバーに力を貸してもらう必要があるわけだが……ではそもそもどうやってウルスムスに攻撃を届かせるかという話になってくる。
あいつも俺クラスの、あらゆる攻撃をカットできるような結界魔法は使えるはずだ。
強固な結界を何重にも張り巡らされれば、いくらエンヴィーたちとはいえ結界を破りきることができるかは怪しい。
破ってる最中にまた元に戻されてるうちに、魔法で焼き殺されるはずだ。
となればやはり狙うは認識の外からの一撃、一発で仕留められるような奥の手であればなおいい。
「私の全力の一撃でも無理ですか?」
「使いどころ次第、といったところだろうな。俺がある程度防御を削った段階で攻撃すれば、ウルスムスに届くかもしれない」
ライライの攻撃はド派手だし、酔いという制限があるので使いどころが大切だ。
上手いこと戦いを組み立てることができれば、ウルスムスの度肝を抜かせるような攻撃にもなりうるはず。
「となるとぉ、私も頑張って働かなくちゃいけなさそうですねぇ」
「セリアの役目はめちゃくちゃ重大だな」
彼女が扱える禁呪は、俺やウルスムスのような正規の魔法を学問として修めてきた奴らからすれば、得体の知れないものばかり。
どんな魔法なのかを看破される心配がないため、防御体勢を取られにくい。
極論、俺たちで結界や防御装備を全て削ってから、セリアの即死魔法を使えばウルスムスは倒せるのだ。
……言葉にするだけなら簡単なんだけどな。
セリアの身体能力は高くないし、もしその姿や正体が露見すれば、ウルスムスに真っ先に狙われる。
人を呪い殺すような魔法は多くとも、自分の身を守るような防御魔法のレパートリーが少ないセリアは、俺が全力で守らなければ多分すぐに焼き殺されることになるだろう。
彼女を使うのはライライより最後、それこそ本当にトドメを刺すその瞬間だけにする必要がある。
存在を秘匿するためにも、アンデッドの使用もナシだな。
いや……ちょっと待てよ?
「セリアって、アンデッドの使役と禁呪、同時にいけるよな?」
「はぁ、まあ、無理のない範囲内であればぁ」
「何か思いついたんですか、隊長?」
「――おう、詰め方さえ誤らなければ、いけるかも」
一筋の光明が見えた……気がした。
無論今はまだ完璧には程遠い穴だらけの案だが、その穴は頑張って俺が埋めればいい。
こういう時、俺が全力でサシでガチバトルをして勝てるようなヒーローだったら良かったんだが。
女の子たちに割とおんぶにだっこっていうのが、なんとも情けない。
ただ、あんな性悪のウルスムスとの戦いで誰かが命を落としたりする必要なんかない。
ちゃっちゃと勝って、祝杯をあげるとしようや。
……これで本当にプルエラ様と会うだけだったら、俺めっちゃ恥ずかしいな。
まあその時は、俺が恥に耐えればいいだけか。
杞憂で終わってくれることを祈りながら、準備だけは調えておくことにしよう。
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