作戦会議 1
『七師』ウルスムスは、何かと俺のことを目の敵にする男だった。
トリガー公爵家という高貴な家に生まれた彼は、孤児上がりの俺をとにかく嫌っていた。
『七師』の人間は俺を除けば、全員貴族に縁のある人間だ。
魔法というのは、あまりにも先天的な資質による部分が大きく、血統に強く依存する。
そのため魔法使いの息子は魔法使いになるし、急に魔法の才能に目覚め、覚醒するような人間はほとんどいないのだ。
ちなみにその例外が、俺だったりする。
……いや、もしかしたらどこぞの傍系の貴族の血なんかを、うっすーく引いてたりはするのかもしれないけど。
まさか大貴族の血が流れているはずもあるまい。
そんな孤児がいてたまるか。
ウルスムスを一言で表すなら……性悪、だろうか。
『強欲』のウルスムスと呼ばれていると知った時は、「ああ、言い得て妙だな」という納得が勝ったもん。
そういえば、なぜ俺は『怠惰』なのだろうか。
わりと頑張って仕事してる方だと思うんだけどな……。
もっとそれっぽい二つ名をつけてくれても、罰は当たらないと思う。
「そもそもの話、彼を倒せるんですか?」
「不可能ではない……はずだ」
俺はあらかじめ『辺境サンゴ』のみんなと合流する前に考えていたことをつらつらと述べていく。
『七師』ウルスムス、彼が得意とするのは火魔法だ。
その才能は本物で、あいつは広域殲滅の上の大規模殲滅魔法まで使える。
万単位の魔物を殺し尽せるような大魔法を連発してもガス欠しない、正真正銘の化け物だ。
無論身体強化の魔法も相当に使えるし、気力も同様。
俺と同じように魔力と気力を混ぜ合わせる魔闘気を使うこともできる。
本気でやりあったことはまだないが……純粋な出力なら、魔法の威力と強化された身体能力、どちらとも俺の方が劣っているだろう。
つまり、真っ向から一対一で戦ったらまず間違いなく負けるってことだな。
だがウルスムスには付け入る隙がある。
あいつは魔法の腕は一流だが、それ以外の全てが三流以下だからだ。
とにかくプライドが高く、意地の悪い子供がそのまま大きくなったような自尊心の塊だし。 自分以外の人間をとにかく下に見るし。
そもそも貴族以外の平民や奴隷は、人間ではないと本気で思っている。
そもそもウルスムスが今王都で謹慎を食らっているのは、あいつが王の停戦命令を無視して大規模殲滅魔法を使い、味方ごと敵軍を殺戮したからだ。
その時のあいつの供述は、あまりにもバグっていて……正直なところ、思い出したくもない。
ウルスムスは間違いなく狂人だ。
強力な魔法使いというのはみな我が強いと言われるが、俺はあいつより頭のネジがぶっ飛んだやつを知らない。
「さて、どうやってあいつを煽り散らかしてやろうか……」
「うわぁ、隊長わっるい顔してるぅ……」
俺はハナから、ウルスムスと正攻法で戦うつもりはない。
プライドなんてものは犬に食わせているので、どんな手を使ってでも勝つ。
そもそもあいつを殺すなら俺以外の面子も絶対に必要だ。
最悪俺は死んでもいいが、『辺境サンゴ』の面々は誰一人として殺させはしない。
とりあえずウルスムスを煽って激昂させるくらいは、最低でもやる必要があるだろうな。 とにかくあらゆる手を使ってウルスムスを出し抜いてやるぞ。
「とりあえずここにいる面子はシュウを除いて戦ってもらうつもりなんだが、じゃあまず作戦会議をしよう。俺の意見は最後に言うから、まずはみんなでブリーフィングといこう」
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