来訪
「お姉様たちが納得されたところで一つ、話があります」
オウカは食事もそこそこに、そう切り出した。
先ほどまでのにこやかな雰囲気は一変し、真面目そのもの。
真剣な話を聞くために、俺の方も気持ちを切り替える。
いったいどんな話が飛び出してくるんだろうか。
「実は先日、デザント王国の方から来客がありまして」
「ほぉ……」
来たのはどの派閥の人間か、またその目的は何か。
オウカがどうにも言いにくそうな顔をして、ゆっくりと喋っているために、少し想像してみる。
今になってガラリオが非を詫びに来た……いや、ないな。
風の噂ではガラリオ派は死にかけているとも聞いている。
ならばバルド王太子殿下だろうか。
だが既に俺がリンブルに根を下ろそうとしていることは知っているはず……釘でも刺しに来たのか。
あるいは……国王ファラド三世の差し金か?
だとするなら単純な引き止め工作の線は薄くなるだろうが……。
「実は一度、公的な訪問をされたいとのことで」
誰が来るのか。
向こうは何を考えて、どんな手を指すつもりなのか。
色々と脳内で想定をしていたからこそ、俺は最初オウカの言っている言葉を飲み込むのに、時間がかかった。
「お越しになるのは――プルエラ第二王女殿下です」
「……プルエラ様が?」
まさかプルエラ様が来るとは。
いったい、何しに?
決まっている……俺に会うためだ。
オウカの話では、本人たっての来訪という話らしい。
無論プルエラ様のその言葉に、嘘はないだろう。
長い時間を共に過ごしてきたわけではないが、プルエラ様はサクラばりに裏表のない人間だ。
恐らくは俺がデザントから放逐されてしまったことについて、王家を代表して謝りに来たいのだと思う。
だが……あの国王が、本当にプルエラ様の気持ちを大切にするようなタマか?
「匂うな……」
「そ、そんなに臭かったか!?」
「いや、サクラのことじゃない。サクラはいつもいい匂いだ」
「そ、そうか、それならよかった……」
毒のないサクラの反応に少しだけ気を楽にして、食事に戻る。
王族同士の晩餐会。
未だ全貌は掴めないが……恐らく、裏で国王あたりが何か策を練っているはずだ。
準備をしておくに、越したことはないか……。
『辺境サンゴ』のみんなも呼び寄せて、フルメンバーで待機しておかなくちゃいけないな。
これは完全に俺の勘だが……間違いなく、何かが起こる気がする。
こういう時の俺の勘は、当たるんだ。
「となると、少し魔道具作りはお休みしなくちゃだな」
「そうなのか?」
「ああ……俺の持ち味は、事前準備と臨機応変さだから」
俺の勘が当たるのかどうかは、こちらにやってくるプルエラ様との対面の後にわかるだろう。
願わくば外れてほしいと思いながら、俺は一人私室へと戻った――。
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