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「私が……『辺境サンゴ』に?」

「ああ、わりといい案だと思うんだが」


 今のサクラは、なんというか、何をすればいいのかわからなくなっている状態だ。


 だから将来身につけていてよかったと思えるような何かが、習得できる場所に居たり。

 とりあえず周囲から何かを無理強いさせられたりしないような場所で暮らしたりだとか。


 そういったことをして、とりあえず力をつけながら生活していけばいいと思うんだよな。


 自分の問いに答えを出せるのは、当たり前だけど自分だけだ。

 そして答えがすぐに出ないときは、時間は味方になってくれる。


 とりあえず『辺境サンゴ』に居れば、侯爵の影響下からは少しは離れられるはず。


 父の影響を受け続けたことを気にしているサクラが、国内にいながらある程度自由に動ける場所としても、『辺境サンゴ』ってわりといいところだと思うんだよな。

 つまり今のサクラにとっては、かなり居心地のいい場所だと思うんだよ。


 そしてこの提案は、何もサクラにとってのものってだけじゃない。

 関係者全員に、割と益のある話ができる。


 サクラをメンバー入りさせるのは、ソルド殿下にとっても益のある話になる。

 殿下は俺に会う度、結構な頻度で嫁をもらって子供を作れと言ってくる。

 それもリンブルという土地に、俺を居着かせるためだ。


 サクラが『辺境サンゴ』に入れば、他国から見ればうちのクランはリンブルの紐付きという風に見える。

 そしてサクラを経由してデザント式の魔法技術なりを手に入れることができさえすれば、ソルド殿下が俺に執着する理由もなくなる。


 侯爵にとっても『辺境サンゴ』に自分の娘が入ることは、いくつもの意味を持つ。

 武力的な面が強いけど、いくらでも政治利用もできるはずだ。

 親としての心配とかを脇に置けば、アルスノヴァ侯爵にも利益がある。


 そして俺たちにとっても、面倒なことばかりじゃない。


 『辺境サンゴ』は、元は第三十五辺境大隊から生まれた冒険者クランだ。

 今はみんなやる気があり、足並みが揃っているからいいが、今から十年後、二十年後にメンバーが誰一人抜けないなんてことはまずない。

 結婚するにしろ、カタギの仕事に戻るにしろ、絶対に人員は減る。


 だが元の大隊にこだわって人員補充を行わずに、人数を減らし続ければ、以前と同じ仕事を期待されても、それに答えられないことが出てくるようになる。

 そうならぬように、今のうちから『辺境サンゴ』の人員の補強をしておく必要があると、俺は思っている。


 メンバーが俺以外基本的に戦うことしかできないのは、一緒に軽く冒険者生活をしたエンヴィーたちを見れば明らか。

 頼みのエルルも、俺やクランの面子が関わると我を失うことも多いと、最近発覚したばかりだし。


 ちゃんとした交渉ごとをしたり、クランをしっかりと一つのまとまりとして運営、経営できるような事務処理のできる人間が欲しいと思ってたんだよな。

 ぶっちゃけ現場の個々人の成果物の申告制も、変えた方がいいとは思いつつ変更に着手できてないし。

 とにかくうちのクランには、戦う人員以外のあらゆる人材が足りていないのだ。


 教養があり、リンブルのことに精通しており、元百人隊長たちともしっかりと面識を持っているサクラという人材は、要求値を満たしている。

 エルルとは仲が悪かったりもするが……そこらへんは俺や他のメンバーでフォローもできるはずだ。




 俺が考えていることを、ざっくりと説明すると、サクラは「なるほど……」としきりに首を縦に振っていた。


 すぐに答えは出さなくていいと言ったのだが、歩いている最中も律儀に加入について考え続けているようだ。

 何を言っても、気の抜けたような返事しか帰ってこない。


 息抜きと思って始めた二人でのお出かけだったが……思っていたより、たくさんの収穫があったな。

 屋敷に戻ったら、オウカにもサクラの加入について、意見を聞いてみるか。

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