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提案


 前線で魔物を相手に戦っているだけでいいのか、という疑問を覚えるのは当然のことだと思う。


 まだデザントに居た頃は、俺だって似たようなことを考えたことがあるからな。


 でも俺には第三十五辺境大隊が居たし、言い渡された任務があったし、他にやりたいこともなかったからそれを続けていた。


 今思い返してみると、ある種の惰性のようなものだったのかもしれない。

 現状を鑑みれば、別に抜け出そうと思えばいつだって抜け出せたはずなのだ。


 けれどサクラの場合は、俺とは根本的な事情が違う。

 何せ父に侯爵を持つのだから、基本的に彼女はしたいことが割となんでもできる立場に居る。


 王権がそれほど強くないリンブルでは、アルスノヴァ侯爵の言葉は下手をすれば王家のものより重いような時もある。




「でもそれなら何をするんだ? 偉い人たちへの注意喚起とかになるのか?」

「それは……まだわかっていない。上手く言えないと思ったから、言わずにいたんだぞ……」


 非難がましい目で見てくるサクラにすまんと謝ると、何故か怒られた。

 そこは謝る場面ではないと彼女は言う。

 サクラは俺に、どうしろと言うのか。



 ――少し考え方を変えるか。

 もし俺がサクラだったとしたら、いったい何をするだろう。


 やはり一番やるべきは……俺に取り入って、技術を盗むことだろうか。

 そしてそれをリンブルで普及させることで、国を富ませる。

 これが一番手っ取り早い気がするな。


 けれど実直なサクラは、そんなことはやらないしできない。

 一度は頭の中に案として浮かぶかもしれないが、それを実行に移すことはないだろう。


 じゃあ次にやるべきこと……それこそ他国への注意喚起か?

 でもいくら侯爵の娘だからと言って、そこまで他国に影響を及ぼせるかと言われると疑問が残る。


 それならもし、国内で自分が納得できるようなことをしたいと思うとする。

 それができるようになるためには、かなり高い立場や地位が必要なはずだ。


 騎士団で昇進し団長になっても……やることはそれほど変わらない。

 侯爵の代官になって領地の一つでも治めても……できることはかなり限られている。


 こうやって考えてみても、あんまり現場でできることがないな。

 そりゃサクラも言い淀むというものだ、うん。


 国内に注意喚起をしたり、強くなったり、魔法技術を手に入れたり……そんな色んなことができる手なんて、早々あるはずが……。


「――いや、あるか」

「アルノード、どうしたんだ?」


 少し近付いてくるサクラを見て、今しがた思いついた案の是非を考えてみる。


 問題は……まあいくつかあるが、乗り越えられないほど高いものはない、と思う。

 何人かには許可を取らなければいけないが、別に無理なことでもない……気がする。


 ダメだったらダメだったで、また別の方法を考えればいい。

 折角仲良くなれたし、俺は個人的にはサクラのことは気に入っている。

 彼女が悩んでいるのなら、手を貸してあげたいと、そう思えるくらいには。


 だから俺は一度大きく息を吸って、ゆっくりと吐いてから、


「サクラ、もしよければ『辺境サンゴ』に入らないか?」


 と、そう告げた――。

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