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癇癪

 パトリシアはいろんな思惑の交差する自邸を抜け出し、ホッと肩の力を抜いた。


 両親の思惑は分かってはいるが、相手の出方が分からない。

 若いなら若いほどいいと思うような人物なのか、孫のようにしか思えないのが普通ではないのか?

 父の招待に応じると言う事はその気があるのか?


 元々父の従姉妹に来た話を、我が家が横取りする形になって大丈夫なのだろうか?

 あんなに盛大にお金を使って、勘違いでしたでは済まないのではないだろうか。

 幾ら考えても堂々巡りになるばかりなので、自分の事に集中することにする。


 但しこれだけは言える、家の思惑を知っているとおくびにも出してはいけない。


 決まればそう逃げるだけ、その準備だけは怠らないようにしないと。

 そう思い直したが姉のことだけは心配だった。

 早まって、折角仲良くしている婚約者を蔑ろにしないと良いのだけれど。

 お相手が良い人なだけに、其れだけが心に影を落とした。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 いつもの様に図書館で暗記をした後、本を新しく借り受けマーサと共にアンティークショップへ足を運んだ。

 此処(ここ)で平民風のワンピースドレスとリボン、靴、帽子などを購入して帰宅した。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「何よ、どうしてパトリシアになるのよ。私がやるって言ってるじゃない!」

 姉のキンキンとした怒鳴り声が響き渡っている。

 興奮しているのか、見境なく物を投げているらしい。

「お嬢様、お願いですからお止め下さい」

 折角大掃除をしてピカピカに磨き上げた使用人たちの苦労が、姉の癇癪で台無しになっている。

「ただいま戻りました。どうなさったの?これは」

 余りの惨状に言葉を失った。

 ここ数年は鳴りを潜めていたが、姉の癇癪は相当なものだ。

「パトリシアお姉様、こちらにちょっと」

 妹のセシリアが小声で手招きする。

「本人の意思を確認しましょう、丁度帰って来たのだから」


 お姉様に見つかり惨状の残る部屋を後にして、応接室へとやって来た。

「パトリシア出かける前に言ったわよね、公爵様のお相手は出来ませんって」

「はい。お姉様の仰る通りですが何ですの?お姉様の事を拒否なさったの?」

「そうなのよ、パトリシアにお願いするってお母様が意地悪仰るのよ」


「お姉様何か予定がおありなんですの?」

「何も無いからお相手できるのに。それに私は長女よ。ウチの代表として当たり前でしょう」

「お母様、私に何故固執されるのか分かりませんが、お姉様が適任です。そんなに仰るならその間私は、親戚の家にでも滞在しますわ」

「待ちなさい、パトリシア!」

 今迄(はな)も引っ掛けなかったくせに。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 私は両親が気持ち悪くて、部屋に鍵をかけて立てこもった。

 どんなに素敵な方でも、祖父と年が変わらない方は結婚の対象じゃない。

 公爵の遺産?そんなものいらないわ。


 貴族の娘として、政略での結婚も受け入れるつもりはあった。

 でも限度がある、娘の幸せを願うならある程度は見合った相手にするだろう。

 今まで来た話を潰したとも言っていた。

 搾取子、私は紛れもなくそうなのだろう。

 老公爵と結婚したら一生金蔓だし、城に働きに出ても給料を毟り取られ、有力者に繋ぎをつけろとか言われ兼ねない。

 私に利用価値があると見ている強欲な両親に幻滅した。

 空腹にも関わらず胃が暴れ出しトイレで吐く。

 苦い口の中をうがいで清める。


 でも流石に姉に打ち明ける訳にもいかないわね。

 常識を疑われるし、なぜそんなことを知っているか詮索される。


 でもあの調子なら姉は意固地になってしまうだろう。

 両親が姉に根負けして、私が極力公爵様と接触しないように考えなければ。


「何かいい案はないかしら?」

 父の従姉妹に来た話ならそちらを突っついてみる?

 祖父母に言ってみようかしら。

 私はその段取りを模索し始めた。

皆様いかがお過ごしですか?

私は金曜日が一番好きです〜♪(´ε` )

良い週末になります様に!

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