歓迎準備
皆さんこんにちは。
楽しんでくださるといいな。
両親の下手な寸劇を見せられて辟易とした所で、姉に思わぬ助け舟を出され、何とか危機は回避出来た。
誤解からであろうとこっちには却って好都合だった。
其れから公爵を迎え入れる為の大掃除が連日行われ、急ピッチで歓迎の為の準備が行われた。
「ねぇ、何だか変よね」
妹のセシリアが庭師のうじゃうじゃいる庭を眺めながら呟く。
「昔の知り合いを招くだけにしては大掛かりよね、結婚式ならいざ知らずロザリンドお姉様如何思います?」
「それだけ重要人物という事なのよきっと」
ロザリンド姉様は自信を深めるかの様に言う。
「もしかしてパトリシアお姉様に縁談が来たんじゃありませんか?」
セシリアがニヤニヤして言ってくる。
「えぇー、相手は公爵家なのよ。家格が釣り合わないでしょう」
私が慌てて言う。
しかしあの両親の張り切り様をみたら、単なる商談とは言いがたくなってきた。
「あの家の息子か孫か。おじいさまが見極めにいらっしゃるのかも」
セシリアは謎解きでもするかの様に首を傾げながら言った。
「嫌よ。私は自分でお相手は見つけるのよ」
「そうね、貴方じゃ務まらないでしょう。公爵家は」
何だか含みのある言い方でロザリンドお姉様は言う。
「だからきっとご長男じゃ無いのかも。次男とか三男?」
「きっと我が家に有利な商談があるだけよ。お父様もそう言ってらしたじゃ無い」
「滞在が長すぎるし今までそんな知り合いがいるなんて聞いた事も無いわ」
セシリアが言う事が尤もなだけに私は黙り込んだ。
「ねぇ、パトリシア。もし縁談だったらどうする?」
姉の問いかけに黙り込むが此処ははっきりさせておこう。
「もしそうでも私に受ける意思はありませんわ。家格が違いすぎるのと私にそれだけの器がないからです」
「そうよね、それなら私に譲って下さる?」
「お姉様には婚約者がいらっしゃるじゃありませんの。反対ですわ」
「何?急に惜しくなったの?」
「いえそういう訳では⋯⋯」
「そんな風に聞こえてよ。よりいい条件なら乗り換えるわ」
「ロザリンドお姉様、本気ですの?」
「ええ。その心算は出来ていますわ」
「婚約者を捨てるんですの?」
「そうね、でも一生の事ですもの。公爵家の嫁とたいして力のない伯爵家では、自ずと答えは出るという事よ」
「あんなに仲睦まじかったロバート様を捨てるんですか?」
セシリアは淑女らしからぬ仕草で身を乗り出した。
「余程の生理的に無理なタイプなら諦めますけど、お母様によるとお祖父様はすごく紳士で素敵な方との事ですもの。それなら期待できるでしょ、ロバート様は優しい方ですけど頼り無いのよね」
「ロバート様を大切になさった方が良い様に思いますけど」
私の正直な気持ちを話す。
「あら、話を聞いて惜しくなったのかしら?」
「いえ、ロバート様に悪い噂でも届いては取り返しがつきませんわ。もし、遠回しにそんなお話があったとしてもよく考えて下さい」
「アハハ、勿論よ。その辺は抜かりなくやるつもり。私そういうの得意なの」
やれやれ忠告はしましたよ、確かにね。
「ではこれで。図書館に本の返却に出かけますので」
「行ってらっしゃい〜」
扇子をひらひらさせて、二人の姉妹は其れからも公爵の話題で大いに盛り上がっていた様だ。
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長編「ラブレターを抱いて眠った彼女を追いかけて」こちらは100話完結しています。
短編「からくり知れば」も投稿していますのでよかったら遊びに来てください。
それと今日別の短編も投稿予定です。こちらはテンプレ婚約破棄ものです、お楽しみに(^-^)/